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2018.10.09
原島 一男
“No hot plates and no male visitors.”
「ホットプレートは禁止、男性客もです」
(モナリザ・スマイル)
映画の中で話されている、上品で丁寧、そして役立つフレーズをそのまま紹介する連載。
時は1953年秋、アメリカのボストン郊外の名門ウェルズリ−女子大学で美術史を教えることになったキャサリン・ワトソン(ジュリア・ロバーツ)。カリフォルニアから5000キロの道のりをはるばるやってきたキャサリンに、寮長が校内の寄宿先の部屋についてのルールを細々と説明するシーン。
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HOUSING DIRECTOR: Just a few rules. 「ここの規則です。
No holes in the walls. 壁に穴を開けないこと、
No pet, no loud noises, ペットは禁止、大きな煩い音を出さないこと、
no radio or hi-fi after eight on weekdays, 週日の8時以後はラジオやステレオ禁止、
ten on weekends. 週末は10時以後です。
Uh, no hot plates and no male visitors. それからホットプレートは禁止、男性客もです。
Anything wrong? どうかしましたか?」
KATHERINE: I don't think I can go a year 「1年もホットプレートなしで
without a hot plate. やっていけるかしら?」
ー「モナリザ・スマイル」(mona liza smile 2003 監督:マイク・ニューウェル
脚本:ローレンス・コナ−&マーク・ローゼンタール)
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「モナリザ・スマイル」は、キャサリンが体験する1950年代女性の幸福感を巡る動きを探って行くのですが、それはそれとして、この会話は単語のつなぎ合わせだけで必要な事柄を語って行くという良い実例なので、注目することにします。よくみると、NO + 名詞 だけです。
・No holes in the walls = 壁に穴を開けないこと、
・No pet = ペット禁止、
・No loud noises = 大きな煩い音を禁止
・No radio or hi-fi after eight on weekdays
= 週日の8時以後はラジオやステレオ禁止(hi-fi (high fidelity) は当時の音楽再生装置でステレオになったのは1950年代後半)。
"No hot plates and no male visitors." 「ホットプレートは禁止、男性客もです」と締めくくっています。
No Parking や No Smoking あるいは No Photograph などと合わせて英語学習に役立てましょう。
今は「なんでもある時代」とはいえ、超一流大学の厳格さがよく出ています。
キャサリンは I don't think I can go a year without a hot plate.’「ホットプレートなしで1年やれるとは思いません」と不満を訴えていますが、この I don’t think 〜 も丁重に自分の気持ちをあらわす適切な表現です。
進歩的な考えで行動するキャサリンは、時には、恋愛や将来に迷い、自分を見失う生徒たちにとって、勇気を与えてくれる理想の女性像となって行きます。が、反面、保守的な同僚の教師たちや卒業生、それに生徒たちの親の中には、キャサリンの言動に疑問をとなえる声もありました。映画がどう展開して行くか、女性の自立の姿をどう描いて行くのかは、今も昔も変わらないテーマです。
なお、舞台となったウェルズリ−女子大学はヒラリー・クリントンの出身校としても知られています。
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原島 一男
Kazuo Harashima
一般社団法人内外メディア研究会理事長、ノンフィクション作家。慶應義塾大学経済学部卒業。ボストン大学大学院コミュニケーション学科に留学後、1959年NHKに入局。国際局で英語ニュース記者・チーフプロデューサーを務める。定年退職後、山一電機株式会社に入社、取締役・経営企画部長などを務める。現在、英語・自動車・オーディオ関連の単行本や雑誌連載の執筆に専念。日本記者クラブ・日本ペンクラブ会員。『店員さんの英会話ハンドブック』(ベレ出版)、『オードリーのように英語を話したい!』(ジャパン・タイムズ)、『なんといってもメルセデス』(マネジメント社)など、著書多数。