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COLUMN コラム

名作にみる美しい英語

2019.06.03

名作にみる美しい英語(154)

原島 一男

‘I drank too much last night.’ 
「昨夜は飲み過ぎた」
(The Swimmer by John Cheever)

 小説や映画などの名作から選んだ美しい英語を紹介する連載。
 そのフレーズが生まれた時代や背景を色濃く伝え、使った人の気持ちを具体的に表します。
 それをじっくり観察することで、あなたの今の英語を鍛えあげましょう。

 ジョン・チーヴァー(1912-1982) は、1940年代から雑誌「ニューヨーカー」を中心に短編小説を続けて発表し都会派作家としての地位を築きました。
 その後60年代には長編小説にも才能を発揮しましたが、事情あって酒浸りの生活に陥り生死をさまようほどになったそうです。
 しかし、そこで一念発起した彼は、それから死ぬまで一切酒類を口にせず、1977年には四作目の長編小説「ファルコナー」でピューリツァー賞を獲得しました。  
 そのチーヴァーが「ニューヨーカー」(1964/7/18号)に発表した「ザ・スイマー」の冒頭では、
“I drank too much last night.” (昨夜は飲み過ぎた ) に続いて、登場人物たちに何回も「飲み過ぎた」を繰り返させています。

J.C: It was one of those midsummer Sundays    ある夏の盛りの日曜日のこと、
  when everyone sits around saying         誰もがだらだらと時間を過ごしながら
   “I drank too much last night.”      「昨夜は飲み過ぎた」と呟いていた。

DONALD: “I drank too much.”          「飲み過ぎた」
LUCINDA: “We all drank too much.“       「みんな、とても飲んだのね」
HELEN: “It must have been the wine.“     「きっとワインのせいに違いないわ。
    “I drank too much of that claret“   「あのクラレットを飲み過ぎたわ」

-(The Swimmer by John Cheever)

・sit around = だらだらと時を過ごす
・We all    = みんな誰でも 
・claret      = フランスのボルドーワインのこと

 次は、ロンドンに住む30歳代未婚女性の日常を描いた「ブリジット・ジョーンズの日記」(Bridget Jones”s Diary by Helen Fielding 1996)から。
 彼女は新年の決意に ”過度の飲酒”を止めることあげています。

New Year’s Resolutions, I will not:  新年の決意、今年しないこと:
・Drink more than fourteen alcohol units a week 週間のアルコール摂取が14単位を越える飲酒 
 (1単位は、ワインならグラス1杯、ウイスキーなら2杯)
・Smoke.       喫煙
・Waste money on: pasta-makers, ice-cream machines or other culinary devices which will never use; 
books  by unreadable literary authors to put impressively on shelves; exotic underwear, since pointless as have no boyfriend. 
無駄な出費(例:決して使わないパスタやアイスクリーム製造器などのキッチン用品、見せびらかしに本棚に飾るだけの読み難い作家の書籍、ボーイフレンドがいないのに意味のないエキゾチックな下着) など 
 

New Year’s Resolutions, I will : 新年の決意、今年すること:
・Stop smoking.                禁煙
・Drink no more than fourteen alcohol units a week. 
                 週間のアルコール摂取を14単位以内にする節酒
・Reduce circumference of thighs. 脚をほそくする など

 さて、ビールでもウイスキーでも日本酒でも、飲み始めて少し血液のめぐりが良くなった頃が一番楽しいですよね。
 その少し飲んでほろ酔い気分になった状態が tipsy、それに正反対の泥酔状態が intoxicate です。

CAROLYN:  I probably wouldn't even tell you this 「私が少しほろ酔い気分でなかったら、
     if I weren't a little tipsy, but ...   このことをあなたに言わないでしょうけど、、、」

―「アメリカン・ビューティー」(American Beauty  1999) 監督:サム・メンデス  脚本:アラン・ボール)

MELANIE: I really shouldn't have any more.    「もうこれ以上飲めません。
     I'm a little tipsy already.        ほろ酔い気分ですから」

―「鳥」(The Birds 1963)  製作・監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:エヴァン・ハンター 原作: ダフネ・デュ・モーリア)

 最後は、ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」から。スパイと間違えられて誘拐され、命を狙われたソーンヒル(ケーリー・グラント)が、無実を確認するために警部と一緒に現場検証に来たときの会話です。 

CAPTAIN:  Mr. Thornhill has told us that        「ソーンヒル氏によると、
          he was brought to this house         彼は昨夜、強制的にこの家に
      against his will last night          連れて来られ、ご主人の友人たちに
       and forcibly intoxicated by some friends 無理やり泥酔させられた
               of your husband.                        とのことです。
               Did you know anything about this?    これについて何かご存じですか?」
WOMAN:   Well, now, Captain, Roger was a bit tipsy 「警部さん、夕食にタクシーでここに着いたとき、
             when he arrived here by cab for dinner...  ロジャーはもうほろ酔い気分でした」
THORNHILL:  She's lying!                 「うそだ!」

― 「北北西に進路を取れ」(North By Northwest 1959) 監督: アルフレッド・ヒッチコック 脚本:ア−ネスト・レ−マン

・forcibly intoxicated  = 無理やり泥酔させられた 
・Roger was a bit tipsy  = ロジャーは、ほろ酔い気分でした

 ということで、飲み過ぎはいけません。心当たりはありませんか?

         

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原島 一男

Kazuo Harashima

PROFILE

一般社団法人内外メディア研究会理事長、ノンフィクション作家。慶應義塾大学経済学部卒業。ボストン大学大学院コミュニケーション学科に留学後、1959年NHKに入局。国際局で英語ニュース記者・チーフプロデューサーを務める。定年退職後、山一電機株式会社に入社、取締役・経営企画部長などを務める。現在、英語・自動車・オーディオ関連の単行本や雑誌連載の執筆に専念。日本記者クラブ・日本ペンクラブ会員。『店員さんの英会話ハンドブック』(ベレ出版)、『オードリーのように英語を話したい!』(ジャパン・タイムズ)、『なんといってもメルセデス』(マネジメント社)など、著書多数。

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