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COLUMN コラム

名作にみる美しい英語

2019.09.02

名作にみる美しい英語(157)

原島 一男

‘You take care of yourself’
「身体に気をつけてね」
(カズオ・イシグロ作 「夜想曲集」から「チェリスト」)

 小説や映画などの名作から選んだ美しい英語を紹介する連載。
 そのフレーズが生まれた時代や背景を色濃く伝え、使った人の気持ちを具体的に表します。
 それをじっくり観察することで、あなたの今の英語を鍛えあげましょう。言うまでもなく、一つのフレーズだけでは、その作品の全貌をつかむことはできません。
 しかし、それが、あなたを刺激することもあるかもしれません。

‘And I hope also’, he said, ‘you will be very happy with Mr. Peter.’
‘I hope so too,’ she said and laughed again. Then she kissed him on the cheek and gave him a quick hug. ‘You take care of yourself’, she said.
Tibor thanked her, then before he quite realised it, he was watching her walking back towards the Excelsior.
(‘Cellist’ from‘Nocturnes' by Kazuo Ishiguro)

「どうかピーターさんと幸せになりますように」彼は言った。
「私もそう願うわ」と彼女は言って、また笑った。
それから彼女は彼の頬にキスをしてから軽くハグした。「身体に気をつけてね」と言った。
ティボールは彼女にお礼を言い、それから気がついたのだが、彼はエクセルシオール・ホテルに向かって歩いていく彼女の姿をじっと見守っていた。
(カズオ・イシグロ作 「夜想曲集」から「チェリスト」)

 長崎県出身の日系イギリス人小説家。
 サー・カズオ・イシグロ(Sir Kazuo Ishiguro 1954年11月8日 - )。
1989年に長編小説『日の名残り』でブッカー賞(英語圏最高の文学賞)を、2017年にノーベル文学賞を受賞。ロンドン在住。
 これはイシグロさんの最初の短編集の「夜想曲集」から「チェリスト」。
副題は「音楽と夕暮れをめぐる5つの物語」で、いずれも男女間の波風や微妙な感性の違いを描いています。
「チェリスト」は結婚を望む相手から逃げてきたチェロ演奏の大家が若いチェリストに個人指導する話です。

‘take care of  〜’ は「世話をする /面倒をみる/役立てる」という意味。
 ここで、いくつかの映画から ‘take care of 〜’ の使い方を学びましょう。

ARIANE:  Are you coming back to Paris next year?   「来年パリへ戻ってくるんですか?」
FRANK:   I guess so... if I'm in the neighborhood.  「そうだね。もし近くへ来たら」
ARIANE:  Maybe I 'll check at the Ritz once in a while...「多分、私もときどきリッツをチェックします、
          if I'm in the neighborhood.               もし近くに行ったら」
FRANK:   Well, take care of yourself, Thin Girl.        「じゃあ、体に気をつけてね、ヤセッポチさん。
ARIANE:  I will, Mr. Flannagan.            「そうします、フラナガンさん」
-「昼下りの情事」 (Love in the Afternoon  1957  監督:ビリー・ワイルダー  
脚本:ビリー・ワイルダー、I. A. L. ダイアモンド 原作:クロード・アネの小説『アリアーヌ』
 

Elliott: You could be happy here.      「ここ(地球)で幸せに暮らせるよ。
    I could take care of you.        ぼくが面倒を見てあげる。
    I wouldn't let anybody hurt you.    誰からもいじめられないようにする。
    We could grow up together, E.T.   ぼくと一緒に大きくなれるよ、E.T.」
E.T. :  Home. Home... Home.           「ホーム。ホーム。ホーム。」
-E.T.  (The Extra-Terrestrial   1982 監督:スティ−ブン・スピルバーグ  脚本:メリッサ・マシソン)

LISA: Just a minute, Carl.             「ちょっと、カール。
   This will take care of the taxi as well.     これでタクシー代もね」
- 「裏窓」 (Rear Window 1954  監督: アルフレッド・ヒッチコック 脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ) 

KATHARINE:   Tess, take care of the bags.   「テス、バッグをお願い。
       I'll meet you at the car.     車のところで会いましょう」
-「ワーキング・ガール」 (Working Girl 1988 監督:マイク・ニコルズ 脚本:ケヴィン・ウエード)

 別れぎわに使われる‘別れの言葉’ は、ほかには次のようなものがあります。

 「さようなら」    = Good bye.
 「また」       = See you.
 「お世話になりました」= Thanks for your help.
 「失礼します」    = Nice meeting you.
 「大事にね」     = Take care.       など

 映画「僕たちのアナ・バナナ」では、4人の男女が人を別れるとき、それぞれ違ういろいろな表現を使っています。

  ANNA: Nice to meet you.    「お会いできて、よかったです」
  RACHEL: Good luck to you.    「ご幸運を」
  BRIAN: I'll talk to you.    「また、お話ししましょう」
  ANNA: Call me soon.         「そのうち、電話ください」 
  JAKE: Thanks again.       「いつも、どうも」
-「僕たちのアナ・バナナ」(Keeping The Faith  1999年 監督/主演:エドワード・ノートン 脚本:スチュアート・ブランバーグ)
 

 これをみると、別れるときにも、会ったときと同じ “Nice to meet you.” が使えることが分かります。
 “Good luck to you.”と“Call me soon.” は話し手の気持ちをこめています。
 “Thanks again.” はシンプルながら快く響くあいさつです。

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原島 一男

Kazuo Harashima

PROFILE

一般社団法人内外メディア研究会理事長、ノンフィクション作家。慶應義塾大学経済学部卒業。ボストン大学大学院コミュニケーション学科に留学後、1959年NHKに入局。国際局で英語ニュース記者・チーフプロデューサーを務める。定年退職後、山一電機株式会社に入社、取締役・経営企画部長などを務める。現在、英語・自動車・オーディオ関連の単行本や雑誌連載の執筆に専念。日本記者クラブ・日本ペンクラブ会員。『店員さんの英会話ハンドブック』(ベレ出版)、『オードリーのように英語を話したい!』(ジャパン・タイムズ)、『なんといってもメルセデス』(マネジメント社)など、著書多数。

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