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菅野 真一郎
Shinichiro Kanno
1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。
これまで毎月1回、81回にわたり中国進出にあたっての留意点、中国事業運営上の留意点などを中心に持論を述べてまいりました。今回諸般の事情から最終回ということになりましたので、私が1984年4月、初めて上海駐在して以来今日まで35年間、中国や中国ビジネスに関わってきた経験をもとに、中国や中国人...
1.入念な事前調査の重要性 (1)実査とヒヤリング ②現場を実査し、詳細なヒヤリングを行う 製造業の進出を想定した場合、実査すべき現場はいくつか考えられます。 まず工場建設候補地です。工場の操業、運営に必要な条件を満たす候補地(多くの場合、各地の工業開発区―日本の工業団地に相当...
1.入念な事前調査の重要性 (1)実査とヒヤリング ①中国側からの積極的情報開示は期待できない(続き) 前回(第79回)、事前調査の実査やヒヤリングで大事なことは、経験豊富な日本の銀行、商社、先住の日本人駐在員からの情報収集が欠かせないこと、そして合弁交渉や行政当局との交渉で確認すべ...
第77回まで、中国進出にあたっての一般的留意事項を説明しました。今回からは中国進出にあたって入念な事前調査がいかに大切かということを、実際に遭遇したトラブル事例も交えて説明していきたいと思います。官僚主義中国らしい制度・習慣の特殊性や中国や中国人との付き合い方にも触れることがあると思います...
1.昨年(2019年)12月以来、中国湖北省武漢市を中心に発生した新型コロナウィルス肺炎はNHK報道で本日(2020年2月16日)現在、感染者6万8,500人、重体1,957人、死者1,665人と報じられていますが、依然として日毎の増加基調は変わらず、中国はもとより日本でも一段の厳戒態勢に入...
10.批准権限違反のプロジェクト 中国では外資企業進出に際しては、業種、投資規模、投資内容などにより、プロジェクト(中国語で「項目」)の批准(行政当局の許認可)についていろいろの規制があり地方政府(市や省政府)や中央政府(商務部、国家発展改革委員会、国務院)の批准を経て進出が可能となりま...
8.親会社に全面依存、中国に全面依存は危険 (1)前回は勧誘を受けた親会社の中国プロジェクトに全面的に依存するのは要注意と申し上げました。 (2)今回は「これからは中国だ」と言って日本の工場を整理して資金を捻出して中国に進出するのも要注意と申し上げたいと思います。 やや旧聞に属す...
8.親会社に全面依存、中国に全面依存は危険 (1)勧誘を受けた親会社の中国プロジェクトに全面的に依存するのは要注意です。 例えば自動車部品プロジェクトでは、親しいメイン取引先や親会社から「中国に出るよ」とか「中国の第2工場を〇〇市に作るよ」と言われます。これは「中国に出てこないか、〇〇...
6.合弁パートナーの選定(3) (6)行政トップからの合弁パートナーの紹介は要注意! 中国の行政のトップ(省長、副省長、市長、副市長、行政組織の主任、副主任、局長、副局長など)からの合弁パートナー紹介は、必ずしも合弁事業の最適先紹介という訳ではないので要注意です。合弁件数のノルマ達成、...
6.合弁パートナーの選定(3) (6)行政トップからの合弁パートナーの紹介は要注意! 中国の行政のトップ(省長、副省長、市長、副市長、行政組織の主任、副主任、局長、副局長など)からの合弁パートナー紹介は、必ずしも合弁事業の最適先紹介という訳ではないので要注意です。合弁件数のノルマ達成、...
6.合弁パートナーの選定(3) (5)本社訪問、工場見学は必須―早い段階で実施を! 正に「百聞は一見に如かず」(“百聞不如一見”)で、合弁相手を総合的に判断するには欠かせません。合弁交渉では毎回話がどんどん膨らみがちですから、極力早い段階で実行していただきたいと...
6.合弁パートナーの選定(2) (2)まず今回は、前回の総論(会社の経営理念、経営者の人格、哲学など)の続きですが、会社や経営者が社会貢献活動にどのくらい意を用いているかどうかも、合弁パートナーの的確性を判断する重要な基準になると思います。改革・開放政策の下、経済的利益至上主義に走っている...
6.合弁パートナーの選定(1) 今回から中国での合弁パートナー選定にあたって留意すべき事項について述べてみたいと思います。 中国事業の成否は製品の市場性が最大のポイントであることは、日本での事業の場合と全く同じですが、特に中国での合弁事業の場合は良いパートナーに恵まれるかどうかも非常...
5.進出地域の選定 ① 1か所で全土対応は困難 中国進出にあたっては、広い国土(米国とほぼ同じ、日本の26倍弱)のどこに進出するかが事業の成否を決める重要なポイントの1つであることは言うまでもありません。業種(消費財-大衆顧客向け商品なのか、産業資材-部品、素材、原材料なのか)、進出目...
4.合弁パートナーの選定(3) ⑦香港・台湾企業との共同進出は、長年の信頼関係が大前提 言葉の問題もなく、生活習慣が共通で中国側の動きを把握しやすいということで、香港・台湾企業と一緒に中国に進出することをよく薦められます。また、例えば台湾人はやはり我々日本人よりは中国や中国人のことを熟...
4.合弁パートナーの選定(2) ④行政トップの紹介に安心しないこと 中国の行政トップ(省長、市長、県長や主任、局長など)の紹介は、必ずしも事業の最適先紹介という訳ではありません。合弁件数のノルマ達成、個人的コネ(息子や縁戚がいる)、自分や部下の天下り先確保、赤字国有企業の建て直しを図る...
4.合弁パートナーの選定(1) 今回は、中国での合弁パートナー選定にあたって留意すべき事項について述べてみたいと思います。 世界からの対中投資件数の統計を見ますと、1997年以降独資の件数が合弁の件数を上回り、例えば2017年実績では、合弁件数8,364件、実行金額297億ドルに対し...
前回(第64回)から、中国進出の留意点について、所見を述べております。 第1回は、一般的な留意事項として、進出事業部門の考え方、進出するなら早く進出することを述べました。最近知ったことですが、その業界では世界的シェア(60%)を有する日本のトップ企業の社内誌に、「1990年、独資でなけ...
2012年の日本政府による尖閣諸島国有化以来冷え切っていた日中関係も、国際経済・政治環境の変化と日中それぞれの国内政治情勢の反映で、昨年後半来歩み寄りと関係改善の気運が高まってきております。昨年の日中国交回復45周年は、日中両国共に特段の政府関係の記念行事は有りませんでしたが、今年は日中平...
今回は、去る8月27~31日、10年ぶりに深圳を視察した感想などを述べてみます。 深圳視察の目的は、赤いシリコンバレーと言われる深圳の最新事情を視察し、日本企業の新たな中国ビジネス戦略の方向性やチャンスを探ることにありました。 1.視察先 ①深圳衛視(深圳BSテレビ)―11チャネルの地...
6.中国経済の概況と中国経済発展の要因(7) (7)中国経済の概況(その4) 今回はこの項目の最終回で、日本と中国の経済関係、2016年時点の中国経済の到達点を述べたいと思います。 Ⅱ.日本と中国の経済関係 (1)日中貿易 日本と中国の経済関係の緊密度を測る指標の一つは日中貿易...
6.中国経済の概況と中国経済発展の要因(6) (6)中国経済の概況(その3) これまで(1)2015~2017年実績、(2)2017年の経済実績(総論)、(3)~(6)2017年の経済実績(個別の項目)を述べて参りました。今回もその続きで中国経済の躍進について述べたいと思います。 (...
6.中国経済の概況と中国経済発展の要因(6) (6)中国経済の概況(その3) これまで(1)2015~2017年実績、(2)2017年の経済実績(総論)、(3)~(6)2017年の経済実績(個別の項目)を述べて参りました。今回もその続きで中国経済の躍進について述べたいと思います。 (...
6.中国経済の概況と中国経済発展の要因 (5)中国経済の概況(その2) 前回は(1)2015~2017年実績、(2)2017年の経済実績の総論を説明しました。 今回は「対外経済」関係以下、個別の項目について説明したいと思います。 数字の大きさと拡大の早さに驚かされます。 (3)対外...
6.中国経済の概況と中国経済発展の要因(4) Ⅰ.中国経済の概況 (2)2017年の経済実績 上記の表は2015年~2017年の主な経済指標の一部です。以下それぞれの項目の数字の意味するところについて述べていきたいと思います。最初はGDPについてです。 2008年9月のリーマンシ...
6.中国経済の概況と中国経済発展の要因(3) (3)人材強国戦略 中国経済発展の第3の要因は「人材強国戦略」で、これが中国経済のみならず中国国家発展の一番の要因だと思います。 前々回、前回で述べた11期3中全会での改革・解放政策を主導した鄧小平氏はどういうポジションにいたか。197...
6.中国経済の概況と中国経済発展の要因(2) (2)在外華僑・華人の存在 前回は、中国経済発展の要因(1)として、1978年12月、中国共産党「11期3中全会」で、それまで中華人共和国建国以来30年に及ぶ毛沢東主導の政治・階級闘争、社会主義統制経済・計画経済(自力更生等の鎖国政策)の行...
6.中国経済の概況と中国経済発展の要因(1) 今回から数回にわたり、中国経済の概況や中国経済発展の要因について、私見を述べたいと思います。 中国は1978年12月の中国共産党「11期3中全会」(中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議)で経済改革・対外開放政策を採択して今年は40周...
(5)閑話休題「上海日本人学校誕生と寄付集め」(その2) 前回は1984年初めて家族帯同で上海に赴任し、上海日本人学校を立ち上げ開校した背景と経緯を述べ、開校に際して必要な運営資金2,000万円の調達に携わったお話をしました。 2度目の上海駐在は1991年から3年間上海支店長として単...
(5)閑話休題「上海日本人学校誕生と寄付集め」 今回は閑話休題、私の2度にわたる上海駐在時代に関わった、仕事とは直接関係ない事項についてご報告したいと思います。題して「上海日本人学校誕生と寄付集め」。 学童年齢の子供を持つ海外駐在員にとって、赴任地に日本人学校(あるいは日本人補...
(4)悪徳ブローカーに気を付けよう(その13) ③悪徳ブローカーの事例(その11) これまで10回にわたり外資企業(主として日系企業)の中国進出にまつわる華僑系の悪徳ブローカーの事例をご紹介して参りました。今回は事例の最終回で、日本人や中国人の“大学教授”など...
(4)悪徳ブローカーに気を付けよう(その12) ③悪徳ブローカーの事例(その10) 今回ご紹介する事例も、プロの悪徳ブローカーではなく、平凡な在日中国人留学生と本国の父親がつるんで日本の事業家を騙して、数億円の不当利益を手に入れた事例です。 以前勤めていた銀行のある地方支店の有力...
(4)悪徳ブローカーに気を付けよう(その11) ③悪徳ブローカーの事例(その9) 今回ご紹介する事例は、職業的プロの悪徳ブローカーではなく、平凡な中国市民(あるいは華僑系市民)が単発的に日本の経営者を陥れようとした事例です。中国でのビジネスの世界ではふとしたきっかけでこのような落とし...
(4)悪徳ブローカーに気を付けよう(その10) ③悪徳ブローカーの事例(その8) 今回も敢えてパターン化はしにくいけれどもよくある事例をご紹介します。 (前金40%のうまい話) 以前勤務していた銀行の地方支店より、住宅関係有力取引先に対し自社主力製品の住宅10棟を前金40%で買...
(4)悪徳ブローカーに気を付けよう(その9) ③悪徳ブローカーの事例(その7) これまで悪徳ブローカーの事例を,日本企業の役員と親しい人物を介して間接的に接近しくるパターンや、中国政府や地方政府の要人の子息や子息と称する人物のパターン、行政トップの紹介する土地や建物...
(4)悪徳ブローカーに気を付けよう(その8) ③悪徳ブローカーの事例(その6) 今回も前回に引き続き中央・地方の行政のトップあるいは行政機関が関わる案件でも注意(用心)する必要があるという事例をご紹介します。 日本では斯業界有数の大型量販店B社の中国進出にまつわる、地方政府関連天...
(4)悪徳ブローカーに気を付けよう(その7) ③悪徳ブローカーの事例(その5) 今回は中央・地方の行政のトップあるいは行政機関が関わる案件でも注意(用心)する必要があるという事例をご紹介します。 大手アパレル繊維関係メーカーA社は日本の人件費高騰対策として、中国の沿海地域中堅都市...
(4)悪徳ブローカーに気を付けよう(その6) ③悪徳ブローカーの事例(その4) 今回は地方都市政府の「幹部の息子」と称する悪徳ブローカーの事例2件をご紹介します。 日本の関西の代表的観光都市で、日本最初の喫茶店を開業したと言われているA社は、地元のほか東京でも古風な店名とたたずまい...