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2018.05.21
菅野 真一郎
6.中国経済の概況と中国経済発展の要因(4)
Ⅰ.中国経済の概況
(2)2017年の経済実績
上記の表は2015年~2017年の主な経済指標の一部です。以下それぞれの項目の数字の意味するところについて述べていきたいと思います。最初はGDPについてです。
2008年9月のリーマンショックを4兆元(60兆円)の景気対策など果敢な金融・財政出動で乗り切り、9%以上のGDP実質成長率を維持してきましたたが(改革・開放政策スタートの1979年から2013年まで34年間のGDPの平均実質成長率9.8%)、2012年以降7%台にスローダウン、2015年は6.9%、2016年は6.7%、2017年は6.9%と6%台が定着しています。
但し、2014年のGDPは10兆ドルの大台を超え2016年は11兆ドル、2017年は12兆ドルを超えました。2010年GDPが日本を抜いて世界第2位(1979年は第27位)に躍進して数年を経た中国は、これまでの資源・エネルギーを多く消費する量的拡大から、今後は質と効率を重視する持続的安定成長路線に政策の方向性を転換しました。
2017年は実質成長率6.9%でも新規雇用者1,351万人(年初目標1,100万人以上)を達成、またそれまでの投資や貿易(外需) 依存から内需中心の経済成長を目指し、産業構造の転換、都市と農村の格差是正などの政策も過去数年来相応に進展しています。こ
のような新しい経済発展段階を「新常態」(ニューノーマル)と称していましたが、2017年10月の第19回中国共産党大会や2018年3月の全人代の政治報告では「新常態」の言葉は消えています。ただし量から質・効率重視への政策の転換は引き続き強調されて
いて、政策方針・政策の方向性は変わっていません。
なお2017年名目GDP12.25兆ドルの6.9%は8,453億ドルで、インドネシアの名目GDPの91%、タイの名目GDPの2.1倍のGDP規模が増加すること意味しています。
ちなみにアセアン10カ国の2016年名目GDP規模は2兆5,251億ドル、人口6億2,919万人です。
GDP実質成長率 +6.9% (目標「+6.5%前後」をクリアした)
名目GDPは82兆7,122億元 (12.25兆ドル)
cf.2016年の名目GDP=米国 18.62兆ドル、日本 4.94兆ドル、独 3.48兆ドル
(構成) 第1次産業 6兆5,468億元 +3.9%(GDPの 7.9%)
第2次産業 33兆4,623億元 +6.1%( 同 40.5%)
第3次産業 42兆7,032億元 +8.0%( 同 51.6%)
(寄与率)最終消費(個人消費)58.8% (前年より5.8ポイント下降するも、高水準)
資本形成総額(公共投資や設備投資) 32.1%
2016年に引き続き前年比では第3次産業、最終消費が伸びている―「構造改革進展の成果」(習近平、2016年談)
(この項つづく)
菅野 真一郎
Shinichiro Kanno
1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。