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2019.07.08
小川 達大
5月16日の日本経済新聞に『アジア デカコーンの警告 日本企業が逃した市場とは(梶原誠)』というコラムがありました。
インドネシアにゴジェックGo-jekというバイクの配車サービスから発展している会社があります。今や、企業価値は100億ドルを超え、世界に17社しかない「デカコーン」の1社です。彼らは「チェンジ・インドネシア」「チェンジ・東南アジア」を掲げ、急拡大しています。高くて広い志と、リスクも覚悟した素早い意思決定、そしてその根っこにある起業家精神。
対して、今の日本企業は、ゴジェックの成長の原動力となるような、起業家精神を失っているのではないか、とこのコラムでは警告をあげています。かつての日本企業には、宗教さながらの熱気ある起業家精神があったではないか。「かつてこだわった原点を取り戻さないと、頼みのアジアでも負ける。」と。
アジア展開で成功している日本企業には、ある種の”宗教さながらの”信じるものがあるように思います。例えば、味の素、ヤクルト、公文、無印良品などを思い浮かべると、そこには信念の強さを感じます。「自分たちは、何者なのか。どのような価値を世の中に提供するのか。」というような信念が現場の最前線にまで浸透した時、そのアジア展開は力強いものになります。単に「日本で売っている●●という商品やサービスをベトナムでも売ろう」、という次元を超えて、自社の信念を”布教”する次元まで純度を高めることができれば、その活動はユニークなものになるに違いありません。
そういった企業に出会ったとき、私は、ヨーロッパの大航海時代のことを思います。未知の土地に向けて長い航海に出るというのは、大きな不安や恐怖を伴うに違いありません。そして、航海の途中には予想外の事件や事故が起こるはずで、幾度となく諦めて航海を中断したくもなるでしょう。この大航海という挑戦に、信仰・布教という側面があったことは、とても大切なことであったと理解しています。
起業家精神を追求するとき、その眼差しは、行動の世界を越えて、存在の世界までも射程に入れるでしょう。不確実な挑戦を決意し、様々な想定外の障壁を越えながら実行しきるためには、「我々は何者なのか?」ということに答えが出ていなければならないと実感しています。逆に言えば、この問いへの確信を持っている会社やチームは強いものです。
それでは、ヘンガップライ!
小川 達大
Tatsuhiro Ogawa