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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2018.05.01

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(50) 『およそ1世紀ぶりの会社法改正が実現 新会社法解説(3)』

宍戸 徳雄

毎年4月はミャンマーの水かけ祭り

 第47回のコラムより複数回にわたり、1世紀以上ぶりに改正されたミャンマー新会社法の変更部分について解説をしています。

 今回解説をするのは、営業許可制度(PTT制度)に関わる変更点です。
 今回の改正新会社法の改正ポイントの目玉の一つでもあります。

 旧会社法では、外国企業は、法人の設立手続きとは別の手続きとして、営業許可を別途取得する必要がありました。この営業許可制度を、ミャンマーではPTT(Permit to trade)と呼んでいましたが、これは、いわゆる営業ライセンスのようなものとして運用されていました。この営業許可制度があったために、会社の設立が認められたとしても、PTTを取得していなければ、ミャンマーにおいて実質的な企業活動が出来ないことを意味していました。つまり、PTT制度は、事実上の外資規制の一つの形態として、外国企業のミャンマーにおける活動を制約するハードルでした。

 旧会社法では、PTTについては、直接の明文規定がなく、行政の運用ベースで、商社などの貿易業者、製造業や建設業者、サービス会社などの区分に従って認められていました。このPTTを取得すると3年間は有効で、その後の更新も認められていました。 しかし、実際は、商社などの貿易業者(Trading)については、PTTが認められない運用が長く続いていました。それ以外にも、ホテル業、観光業、建物賃貸業、金融業など、PTT取得前に、個別監督官庁からの許認可を必要とする業種が数多くあるなど、実務対応上、煩雑な事務の一つとして、外国企業を中心に、PTT制度を含めた複雑な許可制度の運用の廃止を求める声が上がっていました。

 今回の改正会社法の下では、このPTT制度は、全面的に廃止となりました。

 法律に基づかない事実上の外資規制の一形態として残っていたPTTが廃止されることは、外国企業としては、歓迎すべきでしょう。手続きの透明性や明確性が高まったことも、もちろん評価されますが、複雑で行政運用に左右される実務に右往左往してきた外国企業にとっては、参入コストが実質的に下がったと見てよいでしょう。

 改正法の趣旨と外国企業への開放スタンスは、スーチーNLD政権の外国企業への開放路線を確認できる一事象としても評価できるでしょう。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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