文字サイズ
2020.05.12
宍戸 徳雄
ミャンマーのお正月休みは春。今年は、4月10日から19日までの10日間。例年であれば、大勢の国民が市街地に繰り出し、お互いに派手に水を掛け合ってお正月をお祝いする水掛祭りが盛大に行われる。しかし、今年はコロナ禍の影響で、政府から外出自粛要請が出されたため、お祝いムードは自粛され、静かな水掛祭りとなった。
ミャンマー最大の経済都市ヤンゴンでは、多数の感染者を出している地域の住民の外出禁止措置、連休明けの4月20日からの工場の操業停止命令が発布された。このセミロックダウン措置についての政府の発表手続きが直前でドタバタして、しかも規制内容の具体的なガイドラインが明確に示されなかったことにより、関係者や市民を混乱させた。
その後政府は具体的なガイドラインについて通達で明示したものの、アウンサンスーチー国家顧問が国民向けにFacebook上にて、混乱を招いたことを謝罪するという異例の事態となった。
また、当初(3月13日)ミャンマー政府は、4月30日までの間、大勢の人が集まる集会や催しの一切を実施しないという通達を出していたが、併せて、今回更なる感染拡大予防措置として、5人以上の集合を制限する通達を発布した。この制限措置には、公務員の勤務が対象外となるなど例外要素も多く、実効性が疑問視されている。
ミャンマーでは、水際対策として、国際線旅客機の離発着を、4月13日まで禁止する措置を取っていたが、同措置を4月30日までに延長。ミャンマーと日本とを直行便で結んでいる全日空は、通常スケジュールでの運行は取り止めているが、ミャンマー在日本大使館と連携して、特別措置として在留邦人の帰国をサポートするためのフライト運行を4月中に数回実施、5月についても流動的ではあるが、数回運行させる予定であると発表している(大使館ホームページにて特別便のフライト情報が公開されている。N H814便成田行きは、5月2日、4日、6日、9日と予定されている)。
ミャンマーでは、4月26日段階では、新型コロナウイルス感染者は146名で、死亡者は5名となっている。146名の内、9名は既に退院している。東南アジアの中では、比較的感染拡大が小さいものの、現在ミャンマーには、隣国のタイから十万人以上の労働者が帰国しており、その中から今後感染が広がるのではないかと、政府は神経を尖らせて警戒をしている。国外からの帰国者については、21日間の隔離期間を設定して、厳格な隔離政策を取っている。
今年は、アメリカの大統領選挙と同様に、ミャンマーも議会の総選挙がある。アウンサンスーチー国家顧問率いる現与党(国民民主連盟:NLD)が4年前に政権交代を実現してから初の本格的な審判の場となる。西ラカイン州の民族問題、国内の経済対策、そしてコロナショックへの対応など含め、スーチー政権への国民の評価が下ることになる。 選挙が近いこともあり、コロナの舵取りでは失策は許されないとの認識の下、国民向けの発信情報については、アウンサンスーチー国家顧問もかなり神経を尖らせている。
宍戸 徳雄
Norio Shishido
株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。