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2018.06.25
宍戸 徳雄
さる5月14日、ミャンマー投資委員会は、アメリカシアトル発の大手コーヒーチェーンであるスターバックスに対して投資許可を出した。スターバックスは、民政移管後のミャンマー市場にいち早く注目し進出の準備を進めていたが、今回の投資許可によって、5年越しのミャンマー進出がいよいよ実現する。スターバックスのミャンマー参入は、コーヒーコンセプツという100%外資会社による参入となる(なお、本件資本は香港)。
スターバックスとしては、東南アジア諸国で未進出国となるのは、ラオスのみとなった。すでに他の東南アジア諸国においては、およそ1400店舗にも及ぶ店舗数を誇る。
ミャンマーにおいてスターバックスは、第1号店をヤンゴン中心部の商業施設スーレースクエア内に出店する予定。その後、発表によれば、ヤンゴン国際空港内や、ミャンマープラザ、ジャンクションシティなどの商業施設にも出店を計画しているという。ヤンゴン市内の主要な施設への出店をいっきに実現し、先行している他のコーヒーチェーンへの攻勢を強める。
ミャンマーには、もともと、コーヒー文化というものはなかったが、ここ2年くらいの間に、ヤンゴン市内ではコーヒー店が急速に店舗数を増やしている。すでに、ヤンゴン市民の間でも人気を博しているグロリアジーンズコーヒー(オーストラリア系)やコーヒービーンアンドティーリーフ(シンガポール系)などは、着実にミャンマー市場において、そのブランドと商品を浸透させつつある。それぞれおしゃれな内装や店舗空間と、オリジナルのコーヒーを提供している。
ミャンマーの中間層は、近隣のバンコクやシンガポールへの渡航することが多いが、スターバックスが作り上げたハイセンスなカフェ文化を、彼らはすでに国外で体感しているはず。今回のスターバックスの参入によって、ますますミャンマーのコーヒーチェーンの競争は激化するのは間違いない。
ちなみに、ミャンマーは、ベトナムほどではないがコーヒー生産ベルト帯に位置することから、コーヒー豆の栽培もおこなわれている。北部のマンダレーや中部のシャン州は、コーヒー豆の産地としても知られている。これらのコーヒー豆は、地元資本によって、小売店で小売りされており、輸出もされている。また、ヤンゴンのダウンタウンでは、ミャンマーコーヒーを提供するカフェも数店舗オープンしている。ミャンマーコーヒーの味は、想像以上に飲みやすく美味しい。
最近では、ミャンマーコーヒーを外国人がミャンマーのお土産として購入することも増えているという。ミャンマーでは、お土産がまだまだ産業化されていないが、ミャンマー―ヒーは将来的に大きなお土産商材となる可能性もある。
今回のスターバックスの本格参入によって、ミャンマー人のコーヒー文化やカフェスタイルがどのように変化していくのか、今後も注目していこうと思います。
宍戸 徳雄
Norio Shishido
株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。