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COLUMN コラム

激動するミャンマー

2019.06.17

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(64) 『トヨタ自動車、ミャンマーで完成自動車生産工場の建設を決定』

宍戸 徳雄

トヨタ自動車のヤンゴン販売店

 ミャンマーへの日本企業の進出ラッシュは、一時期に比べ落ち着いた感があるが、ミャンマーへの製造業進出の目玉とも言える発表があった。

 トヨタ自動車は、5月30日、ミャンマーに「ハイラックス」の完成車工場を建設することを発表。トヨタ自動車としては、ミャンマーにおける初の完成車工場となる。
 既にミャンマーへ進出済みの、スズキ自動車、日産自動車、フォードに続く進出となった。

 工場建設に関わる投資は、トヨタ自動車と豊田通商が共同で5,260万ドルを資金拠出する。この事業はトヨタ自動車と豊田通商の合弁で、合弁の自動車生産会社は「Toyota Myanmar Co.,Ltd.」、出資比率は、トヨタ自動車が85%、豊田通商が15%になるという。

 2021年2月から生産を開始予定で、工場の稼働当初は、年間約2,500台を生産することが可能と見積もっている。将来的には、1万台の生産能力を目指す。

 工場の建設は、日本政府の肝いりで日緬官民合同で開発したヤンゴン近郊(南部)のティラワ工業団地(SEZ)。このトヨタの工場では、約130人程度の新規雇用を見込んでいる。生産方法は、完成車部品を輸入して、それを現地で組み立てるセミノックダウン方式を導入する。

 トヨタ自動車はこれまで、ミャンマーでは輸入車の販売のみを行ってきた。すでに、年間2000台程度の販売実績がミャンマーではあり、トヨタを含む日本車への現地購入者の信頼は厚い。

 トヨタ自動車としては、中国や他のASEAN諸国に生産工場を持っているが、ミャンマーは東アジア、ASEAN地域において、10番目の生産拠点となる。ミャンマーは今後、消費市場としても大きな成長が見込まれていて、トヨタ自動車は、戦略的な生産と販売の体制構築を、ここミャンマーで進める第一歩となる投資を実行する。

 今回のトヨタ自動車の工場進出に刺激を受けた他の自動車メーカーや自動車部品メーカーは、タイやインドネシアを中心としたサプライチェーンの構築を図ってきたこれまでの戦略を再考するきっかけとなるであろう。ミャンマーというインド洋に面した新たな成長余力のある生産拠点が加わることにより、より多面的にサプライチェーンと販売体制が再構築される流れに繋がりそうである。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE

株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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