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2017.11.06
矢野 暁(サムヤノ)
<世界最強のパスポート>
10月も終わろうとしていた時、当地の主要紙The Straits Timesやテレビ局Channel News Asiaが、「ついにシンガポールのパスポートが世界最強になった!」と大々的に報じました。
輝かしいランキングNo.1が山ほどあるシンガポール(シンガポール人が憤慨するようなワーストのものもありますが…)。今度はパスポートの「威力」でその栄冠(?)を掴んだわけです。カナダのArton Capitalというアドバイザリー・ファームが世界中のパスポートの「ビザ無し」や「到着ビザ」によるアクセス度をPassport Indexとして指標化し、下記ウェブサイトで「Most Powerful」から「Least Powerful」までを常時ランキングしています。
https://www.passportindex.org/byRank.php
実は10月後半までもドイツと並んで一位だったのですが、南米パラグアイがシンガポール人に対してビザ無し待遇を決めたため、晴れて単独一位となったわけです。
とは言え、4位にランクされている日本を含め、上位国のパスポートのスコアには大して差はありません。下表で明らかなように、上位の大部分は欧州の国が占めています。
<パスポートの威力>
日本パスポートを持っていれば、世界中の主要国にはビザ無し又は到着ビザで行くことが出来るので、日本人にとりパスポートの利便性や不便性を感じることはあまりないと思います。しかし、例えば私のようにベトナム人の家内がいると、日本や欧州、豪州などへ家族旅行をする度に家内のビザを取得しなくてはならず、パスポートの威力の差を痛感させられるのです。
日本人である私と結婚して18年以上、その間、日本へは平均年2回以上も行っているのに、いまだに日本はせいぜい単年のマルチビザしか発給してくれません。しかも単年でもマルチビザを発給するようになるまで何年もかかり、以前は訪日の度に「一回ビザ」を取得していたのです。ビザ申請の度に預金残高やら何やらを提出させられ、まるで「Not welcome」という感じです。厳格な審査を一度して、一定の要件を満たしていれば例えば5年間のマルチビザを発給するとか、もう少しやりようがあるのではといつも思っています。安倍さん、よろしくお願いしますよ!
因みにベトナムはベトナム人の配偶者である私に5年間のビザ免除をしており、またフランス大使館は家内に4年間のマルチビザを出してくれ、欧州シェンゲン国に何度も行けるようになっています。日本という国がいかに閉鎖的であるか、日本にいらっしゃる日本人の方々はあまり実感する機会が無いのでしょうが、陰に陽に日本は極めて閉鎖的な国です。開国はあくまでも「例外的」「条件付き」というマインドセットなのだと思います。
<シンガポール国籍取得希望者が多いわけ>
シンガポールのパスポートに話を戻しますと、「No.1」とか「最強」とかいうのはキャッチ(フレーズ)みたいなものですが、シンガポールの強さを象徴していると言えます。ベトナムのような周辺アジア国の人々からみれば、シンガポール国籍を取得することは、言わば「一級世界市民」を手に入れることに他なりません。
今まで「逃亡するかもしれない、悪さをするかもしれない途上国の輩(やから)」というような目で見られ、不快な思いを入国時に経験していたのが、オレンジ色のパスポートを手にすることで、「ああ、世界一お金持ちの国から来た人ね」という風に見る目がかわるかどうかは定かでないですが、気分はまるで違うようです。
今やアメリカのグリーンカードなどには目もくれず、「シンガポール・ドリーム」を追い求めるアジアの人々が沢山いるのです。もちろん、日本パスポートを取得したい、などと思う人はほとんどいません…
このオレンジ色のパスポートで世界中の何処へでも!(筆者撮影)
矢野 暁(サムヤノ)
Satoru Yano
慶應義塾大学を卒業後、東南アジア諸国における経済・社会インフラ開発に従事。その後、英国投資銀行にて、食品・飲料、ヘルスケア、衣料、小売等の分野のクロスボーダーM&Aの仲介・助言業務に携わる。ベトナム政府に対する国家開発支援アドバイザー、同国での多岐にわたるベンチャー事業の成功を経て、1999年にCrossborderをシンガポールに設立。ASEANを中心に、B2C・B2Bの事業を問わず大手日本企業や中堅企業がアジアで新規市場参入および事業拡張・改善をするために、戦略、組織、パートナーシップ、マーケティング、人材などの面で支援を行っている。また、アジア・ASEANや異文化・リーダーシップなどをテーマとする企業向けセミナーおよび社内研修の講師も務める。シンガポール経営大学(Singapore Management University: SMU)の企業研修部にて、日本企業、多国籍企業、シンガポール企業へのプロジェクト・コーチ&ファシリテーターも兼務。「アジアから日本を元気にする!」と「草の根レベルで地道にコツコツと」をモットーに、アジアを駆け巡りながら毎月の訪日も欠かさない。シンガポール永住。