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COLUMN コラム

悠久の国インドへの挑戦

2016.11.21

「悠久の国インドへの挑戦」39 忘れ得ぬ出来事:我が家の火事

藤崎 照夫

シュリ スワミナラヤン寺院(インド)

この事故は私の2回目の赴任から約4年半位経過した時に発生しました。
このころ先月まで書いてきました国税との問題や会社の赤字対策など極めて多忙な時期でしたが、会社の経営の観点から見ると、それまでの僅かⅠモデルでのビジネスから早く脱却し、如何に早く次期モデルを決めて市場に投入するかということが最重要課題で、そのために日本にもしばしば出張していた時期でした。この時も日本のトップとの打ち合わせのための3日ほどの短い日程でした。

日本での仕事を終えてデリーの空港に到着すると総務担当の駐在員が出口に立っていました。私はてっきり彼が誰か出張者を迎えに来ていると思い、「誰を迎えに来ているの?」と聞いたところ、彼が少しもじもじしながら「社長です」というので、思わず「何故?」と聞き返したところ、彼の口から「実は今朝社長のお宅が火事になりかなり燃えたのでそれをお知らせするためにお迎えに着た次第です」と説明がありました。

取り敢えず自宅に急いで帰りましたが、その途中の車の中で私が考えたのは、初めてのインド駐在開始からこれまで書き続けてきた2000日を超える日記とその間に色々なイベントで撮った写真が無くなってしまったらこれは取り返しのつかないことだなという思いでした。私が住んでいた家について少し説明しますと、三階建ての一軒家で1階がリビングとダイニングと予備の寝室で約40畳ほどの広さで床は暑いインドを考えて大理石になっており、2階が私の寝室とクローゼット、浴室という仕様でこの部屋は冬場の寒さ対策ということで絨毯を敷いていました。3階はお客さん用の寝室でしたがこの部屋は殆ど使っていませんでした。

自宅に到着し早速火事が出た2階に上がって行き扉を開けて中を見ると長方形の部屋の半分ぐらいは燃えていましたが、幸運にも前述した日記と写真を入れた本箱は無傷でした。サーバントに状況を聞くとベッドの横のエアコンが漏電してその上に掛かっていたカーテンに引火しベッドからクローゼットそして浴室に向かって火が広がって行ったようであるとの説明でした。この火事の第一の原因はエアコンのコードを抜かないで出張に出かけた私の責任ですが、運の悪い時は幾つかの理由も重なるもので、先ず、今回は3日ほどの出張で当初は金曜日に戻ってくる予定でしたが、偶々駐在員の一人が帰国予定でしたので、彼の送別会用の刺身を買うために1日帰国を延ばしたことです。2つ目は、いつもですとお金は外貨もルピーも持って行くのですが3日間の出張ということもあり、全てクローゼットの中にしまっておいた事です。3つ目は、いつも鍵をかけない寝室に鍵をかけて出かけた為に火事に気が付いたサーバントがすぐに部屋に入れなかった事です。

この年は販売も予定を上回るペースで推移していましたし、日本では専務から昇格の内示を受けたところでしたので、正に「好事魔多し」というのはこのようなことかな思いましたが、その時インドにいてもし火事に気が付くのが遅くれたらけがをしたりしたかもしれませんし不幸中の幸いでしたし、お金に換えられない日記と写真が無事に残ったのは本当に幸いな事でした。インドでは今でも盗電がかなり多く停電が頻繁に起こるようですし、電圧の変動も大きいので長期間出かけるときはどうしても電源が抜けない冷凍庫や冷蔵庫以外はスイッチを消すか電源を抜いておいた方が良いのではないかと思います。

この火事の後私は当然のことながら下着を含めた衣類を買い出しに行ったりしましたが、この事故の事を聞きつけた友人の部品メーカーの責任者からシャツやハンカチ等の差し入れがあったり、駐在員からネクタイのプレゼントがあったり、皆さんの励ましとご支援があったことを最後に書いて今月のコラムの筆を擱きたいと思います。

藤崎 照夫

Teruo Fujisaki

PROFILE
早稲田大学商学部卒。1972年、本田技研工業(株)入社後、海外新興国事業に長年従事。インドでは、二輪最大手「Hero Honda」社長、四輪車製造販売合弁会社「Honda Siel Cars India」初代社長として現地法人トップを通算10年務める。その後、台湾の四輪製造販売会社「Honda Taiwan」の初代社長、会長を務めた後2006年同社退職。現在はサンアンドサンズ社、ネクスト・マーケット・リサーチ社等の顧問として活躍インド、アジア事情に幅広く精通している。

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