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定森 幸生
Yukio Sadamori
1973年、慶應義塾大学経済学部卒業後、三井物産株式会社に入社。1977年、カナダのMcGill 大学院でMBA取得後、通算約11年間の米国・カナダ滞在を含め約35年間一貫して三井物産のグローバル人材の採用、人材開発、組織・業績管理業務全般を統括する傍ら、日本および北米の政府機関・有力大学・人事労務実務家団体・弁護士協会などの招聘による講演、ワークショップ、諮問委員会などで活躍。『労政時報』はじめ人事労務管理専門誌への寄稿・連載も多数。2012年に三井物産株式会社を退職後、グローバル・プラットフォーム設立。企業や大学の要請で、グローバル人材育成関連のセミナーやコンサルテーションを実施する一方、慶應ビジネススクール、早稲田ビジネススクールで、英語によるグローバル・ビジネスコミュニケーション講座を担当、実務家対象の社会人教育でも活躍中。
職務分析は、企業の社員全員の職務を対象に行われるものですが、すべての職務カテゴリーについて常に同一の手法を使う訳ではありません。 業種に関係なく伝統的な分析手法においても、例えば、組織の安定的な運営・管理・維持に欠かせない反復頻度が高い定型職務や、特段に高度な技能までは必要としない普遍性の...
前回は、職務分析の目的と企業経営にとっての重要性について説明しましたが、今回は職務分析に不可欠な情報を収集する手法について説明します。収集目標となる情報には、「職務や任務(duties)」とそれを達成するために必要な「課業(tasks)とそれを実行するための知識、技能、能力その他の特性=(kn...
職務分析(job analysis)とは、社員一人ひとりの職務について、 ・日常的にどのような仕事(業務活動)を行っているのか? ・何をどこまで任されていて何にどの程度の責任を負っているのか? ・その仕事によって会社の事業活動にどのように貢献しているのか? ・その仕事を担う個人にはどの...
今回から数回に亘り、報酬管理制度を設計する際に最も基本的な要素となる報酬額を算定する代表的なツールについて説明します。 営業部門や生産部門、あるいは人事担当以外の管理部門の方にとっては、自身の担当分野とは関連性の希薄な話題のように感じられる個所があるかも知れません。しかし、様々なホスト国で...
これまで、第35回から第43回の9回に亘って、企業の報酬管理制度を設計する場合に考慮すべき次の9つの重要な視点について、様々な局面に即して説明してきました。 1.「社内的公正」と「社外的公正」 2.「固定給」と「変動給」 3.「業績」と「社員区分」 4.「職務給」と「能力給」 5.「...
グローバルに事業を展開する企業において、人事管理に関する諸制度の基本理念に沿って、国を超えて「フェアに」運用することは経営上の重要な命題です。なかでも、報酬管理制度については、様々な角度から運用実態やその有効性を観察し検証することが大切です。なぜなら、全社的な人件費管理の会社方針や給与制度・福...
報酬管理に関する制度設計において、役職員の報酬額を本人以外に開示する会社方針については、当然のことながら極めて慎重な経営判断が必要になります。個人情報保護に対する企業の責任が厳しく問われる昨今の社会環境のもとでは、社員の給与額というセンシティブな情報を(社内および社外に)開示することは、違法な...
企業の報酬戦略において、「金銭報酬(monetary rewards)」と「非金銭報酬(nonmonetary rewards)」の特徴や期待される役割、両者をどのようなバランスで社員の報酬総額(total compensation)を決めるべきかについての議論は、その企業の規模や業種の違いは...
企業は、その事業目標を達成する過程で、事業戦略を実行するめに必要な人材を「労働市場」から確保します。労働市場には、社員として組織に在籍する役職者で構成される「内部(社内)労働市場(internal labor market)」と、新規採用の候補者(求職者)で構成される「外部(社外)労働市場(e...
報酬管理制度を設計する際、「社員区分」や「職務内容」や「業績」などに基づいて報酬金額を算定する技術的なメカニズムについて、全社的公平の観点から納得性の高い説明によって制度全体に対する社員の理解や当事者意識(sense of ownership)を得ることが大切です。そのため、役員は別として、基...
「職務給」とは、個々の社員が担う「職務」それ自体が、会社にとってどれだけ重要であるかを評価して報酬額が決められる制度です。それに対して、「個人職務能力給」とは、個々の社員が自分の職務を遂行する際に発揮する知識・技能・専門性・経験・行動パターン(いわゆるコンピテンシー)などが、どれだけ会社に貢献...
今回は、第36回で説明した「固定給(fixed pay)」と「変動給(variable pay)」を企業が導入する場合の背景を、「業績」と「社員区分」の実務面の視点から考えてみます。固定給でも変動給でも、具体的な報酬要素(compensatory factors)とその算定基準(evaluat...
社員に対する金銭報酬には、「固定給(fixed pay)」と「変動給(variable pay)」があります。 固定給とは、会社の報酬管理制度の算定基準(pre-established criterion)に基づいて年度ごとに決められる基本給やそれ以外の諸手当(allowances)ように...
会社が社員に対する報酬水準を決める際に大切なことは、会社が決めた報酬水準について、社員が「公正(equitable, fair)」であると受け止めるだけの納得性を確保することです。報酬水準の公正さには、「社内的公正(internal equity)」と「社外的公正(external equit...
企業の報酬管理制度を設計する際に最も大切なことは、①その制度が、企業の事業戦略の実行や業績目標の達成を確かなものにするため、社員のモチベーションと組織全体の求心力を高めるインパクトがあることと、②その企業固有の経営理念と経営環境(労働市場や業界の特性、社会的・法的要請など)に合致した制度運用が...
グローバル市場で事業運営を展開している企業にとって、本国においてもホスト国においても、報酬管理は経営にとって非常に重要な命題です。多くの組織において、人件費はすべての経費の中で最も大きなウエイトを占めるわけですから、その「経費効率」は事業活動の成否に直結します。同じ金額の人件費を負担しても、同...
前回は、コンピテンシー・モデルと報酬管理との関係性に触れましたが、今回から数回に亘り、グローバル人事戦略のもとでの報酬管理制度の在り方についてもう少し深く考えてみます。 一般に、会社の人事管理の諸制度は、「特定の前提条件」のもとで「特定の対象者(従業員区分)」に「特定の業務目標を達成」させ...
前回に続いて、経営管理ツールとしての「コンピテンシー」の役割の限界と運用上の注意点を検証する際の視点を採り上げます。今回は(4)「報酬管理との関係性」を考えてみます。 (4)コンピテンシー・モデルと報酬管理との関係性 人事制度は様々な施策から成り立っています。中でも、給与やボーナスを算定...
前回に続いて、経営管理ツールとしての「コンピテンシー」の役割の限界と運用上の注意点を検証する際の視点を採り上げます。今回は(3)「ステレオタイプの回避」を考えてみます。 (3)高業績者の行動特性に対するステレオタイプの回避 人事制度にコンピテンシー・モデルを導入する主な理由は、高業績を挙...
前回に続いて、経営管理ツールとしての「コンピテンシー」の役割の限界と運用上の注意点を検証する際の視点を採り上げます。今回は(2)「共有すべき行動特性」を考えてみます。 (2)コンピテンシー・モデルとして共有すべき行動特性 人事制度というものは、どのようなスキームであっても、人間の行動やそ...
第23回から第27回までは、「高業績を挙げる可能性の高い人材の発掘・育成」に有効なツールとして、「コンピテンシー」という概念が多くの企業や組織で注目されている実態の概略を紹介しましたが、他のさまざまな経営管理ツールと同様に、コンピテンシー・モデルも、人事管理制度を成功に導く“万能薬...