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宍戸 徳雄
Norio Shishido
株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。
世界中がコロナのパンデミックに襲われる中、ミャンマーも例外でなく、ミャンマーの日常の風景も大きく変わってしまった。 ミャンマー最大の経済都市ヤンゴン中心部のショッピングモールなどは、軒並み開店休業状態で、ゴーストタウン化している。ヤンゴンの人々の聖地であるシュエダゴンパゴダも現在、閉鎖...
ミャンマー選挙委員会は、コロナ禍の世界的なパンデミックが収まらない中、選挙準備が大幅に遅れており延期が懸念されていたが、当初の予定通り、2020年11月に、総選挙を実施すると発表。5年前の総選挙では、アウンサンスーチー国家顧問率いるNLD政権が、旧軍事政権の流れを組むUSDPから政権交代を...
ヤンゴン郊外、特にヤンゴン国際空港から北西部のエリアに、工業団地群が複数ある。これらの工業団地群は、ミンガラドン工業団地など含め、日本政府が肝煎でミャンマーの民政移管後、開発支援したティラワ工業団地よりもはるか昔から開発・稼働していた。 中国系、台湾系、マレーシア系、シンガポール系、韓...
ミャンマーのお正月休みは春。今年は、4月10日から19日までの10日間。例年であれば、大勢の国民が市街地に繰り出し、お互いに派手に水を掛け合ってお正月をお祝いする水掛祭りが盛大に行われる。しかし、今年はコロナ禍の影響で、政府から外出自粛要請が出されたため、お祝いムードは自粛され、静かな水掛...
ミャンマー連邦議会は、アウンサンスーチー国家顧問率いるNLDが悲願としてきた憲法改正案の採決を、2020年3月10日より開始、約10日間に亘って審議・採決を行った。 今回の改正案では、文言修正など簡易なものから、NLDが悲願としている連邦議会における軍人議員の固定席である25%(4分の...
ミャンマー最大の経済都市ヤンゴン。そこに日本証券取引所や大和総研といった日本企業コンソーシアムから49%の出資を受け、2015年12月にヤンゴン証券取引所が開設され、当時日本のメディアでも大きな注目を集めた。開所後、2016年3月には実際の株式取引が開始され、以降およそ4年が経過したが、そ...
前回のコラムでは、2019年12月にガンビア政府が国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)に提訴した西ラカイン州の民族問題に関わるジェノサイド条約(1948年)違反訴訟について書きました。その公開審理法廷において答弁をしたスーチー国家顧問の毅然とした態度が、国内支持率を大きく上昇させる結果となり...
明けましておめでとうございます。 2020年は、ミャンマーにとっての最大の関心事は、12月に行われる総選挙。2015年の総選挙において政権交代を実現した現NLDスーチー政権への評価が下される。 国内政治情勢にも特に配慮しながら、国政運営を進めなければならないスーチー国家顧問は、20...
ミャンマーは、2018年10月1日から1年間の期間限定制度ということで、日本、韓国、中国、香港、マカオの旅券保有者の入国ビザ(観光ビザ)の免除を発表して運用がなされていた。 国内的には、西ラカイン州の民族問題がなかなか解決しない中、観光客数の減少が懸念されていたが、このビザの免除の効果...
10月22日に行われた天皇陛下が即位を内外に宣明する「即位礼正殿の儀」に合わせて、ミャンマーのスーチー国家顧問が来日。前日の21日には安倍首相が各国要人23人と即位祝賀外交をスタートさせる中、スーチー国家顧問とも早々に会談を実施。安倍首相は、25日までおよそ50人に及ぶ各国要人との会談を行...
去る9月10日、カタールワールドカップアジア予選の会場となったミャンマー。日本代表の初戦の相手はミャンマー。スタジアムは、最大都市ヤンゴン中心部にあるトゥンナスタジアム。日本代表の初戦ということもあり、日本のメディアは、一斉にミャンマーの国情、治安、スタジアムやピッチの状況などを取材、報道...
2019年7月16日、アメリカ政府は、ミンアウンライン国軍司令官とその側近3名の軍幹部に対して、ミャンマーの西ラカイン州における民族迫害に関与したとして、制裁対象に指定すると発表。 ポンペオアメリカ国務長官は「ミャンマー国軍が、国内において虐待や人権侵害行為を行なっているという信頼でき...
第43回世界遺産委員会がアゼルバイジャンの首都バグーで開催され、ミャンマー中部のバガン遺跡の登録が決定した。決定の速報を現地で聞いた関係者、およびニュースでそれを知ったミャンマー国民は歓喜に沸いた。このニュースは、SNS等を通じてミャンマーの国民にも瞬く間に広がった。 今回、世界遺産登...
ミャンマーへの日本企業の進出ラッシュは、一時期に比べ落ち着いた感があるが、ミャンマーへの製造業進出の目玉とも言える発表があった。 トヨタ自動車は、5月30日、ミャンマーに「ハイラックス」の完成車工場を建設することを発表。トヨタ自動車としては、ミャンマーにおける初の完成車工場となる。 ...
2019年5月7日、512日ぶりに大統領の恩赦によって、ヤンゴンのインセイン刑務所から、ロイター通信の記者2名が釈放された。国際社会は一斉にこのニュースを報道、ミャンマーがこのような形で約2年あまり国際社会からの非難を浴びせられ続けてきたこのロイター通信記者事件を、事態収束の方向に舵を切っ...
前回のコラムで分析したように、ミャンマー政府は、中国と一緒に進めていたミャンマー北西部チャオピューにおける大型のSEZ・深海港開発の縮小を目指し、当初の合意内容を変更する交渉を中国側と行っている。今回のコラムでは、ミャンマー政府がなぜ、事業の縮小に大きく舵を切ることになったのかその背景を分...
中国は、日本政府がヤンゴン近郊のティラワSEZ開発を始めるよりも遥か昔より、ミャンマー北部(ラカイン州)の深海港に適したチャオピューに目を付け、開発を進める流れを進めてきた。ミャンマーは、中国雲南省と隣接し、かつての軍事政権時代より親密なに二国間関係を築いてきた。今でもミャンマー北部のかつ...
2019年1月29日、年明けのミャンマー連邦議会において、アウンサンスーチー国家顧問率いるNLD(国民民主連盟、現与党)から大きな動きがあり、議会内に衝撃が走った。 NLDは、連邦議会に対して、憲法改正のための委員会を設置するよう緊急動議を提出したのだ。このタイミングでのNLDによる緊...
皆様、明けましておめでとうございます。 本年もどうぞ宜しくお願い致します。 去る2018年12月21日、ミンアウンライン国軍司令官が、ミャンマー北部における少数民族武力勢力との軍事行動を、一定期間(2018年12月21日~2019年4月末日まで)全面停止することを発表したこともあり、ミ...
さる11月16日、国連総会の人権委員会では、ミャンマーにおける西ラカイン州における民族問題に対する非難決議が採択された。昨年より日本は、この問題に対して、ミャンマー政府への一定の理解を示して、欧米が取る強硬スタンスとは異なる独自のスタンスを取ってきており、昨年に引き続き、採決を棄権した。今...
11月3日、ミャンマーで、連邦議会の補欠選挙が実施された。この選挙は、2020年の次回の総選挙を展望する上で、重要な位置づけとなる選挙となった。 2015年の総選挙を経て、NLD政権が発足。今回の補欠選挙の結果は、政権交代後の約3年間にわたるスーチー政権の政権運営に対する一つの審判とも...
2018年10月5日、ミャンマーのアウンサンスー・チー国家顧問は、日メコン首脳会議に出席するため、政権移行後2度目となる来日を果たした。 西ラカイン州の民族問題へのミャンマー政府の対応をめぐり、国連を含めた国際社会から非難が高まる中、彼女の発言と日本政府のスタンスが注目を集めていた。 ...
西ラカイン州の民族問題への対応が遅々として進まず国際社会からの非難も高まっている中、ミャンマーの通貨であるミャンマーチャットの通貨安も止まらない。民政移管後、チャットが安定していた時期よりも50%以上も減価した水準まで通貨安が進んでいる。ミャンマー中央銀行による通貨買い支えの市場介入などの...
今回は、前回に引き続き、2018年7月に発表された国民生活白書(2017年度版)の内容について見ていきます。 前回は、電化率の改善の状況を中心に見ましたが、今回は耐久消費財市場において顕著な増加が認められると白書で指摘された携帯電話の普及状況について見ていきたいと思います。 ミャン...
2018年7月、この国民生活白書は2017年度版として、2016年12月から2017年12月までの調査を経て発表された。 ミャンマーは民政移管、そして2015年の総選挙を経て政権は変わったものの、民主化をベースに国民生活のあらゆる部面の厚生を向上させるために改革が進められてきた路線はこ...
さる5月14日、ミャンマー投資委員会は、アメリカシアトル発の大手コーヒーチェーンであるスターバックスに対して投資許可を出した。スターバックスは、民政移管後のミャンマー市場にいち早く注目し進出の準備を進めていたが、今回の投資許可によって、5年越しのミャンマー進出がいよいよ実現する。スターバッ...
第47回のコラムより複数回にわたり、1世紀以上ぶりに改正されたミャンマー新会社法の変更部分について解説をしています。 今回解説をするのは、最近問い合わせが増えている内容でもありますが、第47回のコラムで解説した改正ポイントである外国企業の定義規定の変更によって、ヤンゴン証券取引所におけ...
第47回のコラムより複数回にわたり、1世紀以上ぶりに改正されたミャンマー新会社法の変更部分について解説をしています。 今回解説をするのは、営業許可制度(PTT制度)に関わる変更点です。 今回の改正新会社法の改正ポイントの目玉の一つでもあります。 旧会社法では、外国企業は、法人の...
3月21日、ティンチョー大統領が突然の辞任表明。以前より健康上の問題が取りざたされていたが、本人より休養を取りたいとの理由での辞任のようだ。ティンチョー大統領は71歳、スーチー国家顧問は72歳、共に高齢での行政府のトップを担ってきていた。 NLDによる2016年の歴史的な総選挙の圧勝に...
前回のコラムより、およそ1世紀以上ぶりに改正されたミャンマー新会社法の変更部分について解説をしています。 今回解説をするのは、会社の機関設計に関わる変更点です。 まず、取締役について、旧法では、国籍要件やミャンマー居住要件などはありませんでした。つまり、ミャンマーに居住していない外...
1914年のMyanmar Company Act(旧会社法)よりおよそ1世紀以上の時を経て、2017年12月に、ミャンマーにおいて改正新会社法が成立しました。 今回のコラムより数回に亘り、この改正新会社法の内容について、旧法との比較において変更があった部分について、いくつかピックアッ...
ティンチョー大統領が、大統領の立場としては初、個人的には40年ぶりの来日を果たした。大統領就任後から積極的に外遊活動を行っていたが、日本については、中国をはじめとして他のアジア諸国への訪問に大きく遅れる形となる訪日となった。 安倍総理との会談では、詩人でもあったティンチョー大統領の父親...
ローマカトリック教会のフランシスコ法王が、11月27日から3日間の日程で、ミャンマー入りした。ミャンマーが西ラカイン州の民族問題で国際非難を浴びる中、ローマ法王のミャンマー訪問で、その発言に世界中から注目が集まった。 法王の訪問に先立ち、アメリカのティラーソン国務長官は、西ラカイン州に...
最近のミャンマー関連のニュースと言えば、もっぱらミャンマー北西部のラカイン州の難民問題がその中心だ。このコラムでも、国際社会から見た同問題という視点と、ミャンマー国内から見た視点との間に、大きな差があることも解説してきた。現状、この問題の解消の道筋が見えていないが、アウンサンスーチー国家顧...
現在報道されている西ラカイン州で起こっている難民問題について、ミャンマー国内においてミャンマー人がどのように捉えているのか。ミャンマー以外の世界で一般的に報道されている内容とは、大きく視点が異なっていることに注意をしなければならない。 世界が報じているロヒンギャ問題。そもそも、ミャンマ...
この連載コラムの中でも、過去何度か話題としてきたミャンマーにおけるロヒンギャ問題。依然として、ミャンマー政府は、ラカイン州に居住するロヒンギャ族に対する市民権を認めておらず、ロヒンギャ側の武装集団とミャンマー国軍との衝突が日々繰り返されている。報道によれば、バングラディッシュ国境付近へ27...
アメリカのホワイトハウス報道官は先月17日、国務省の北朝鮮担当特別代表であるジョセフユンが、ミャンマーを訪問し、アウンサンスーチー国家顧問、ミンアウンライン国軍司令官と会談。北朝鮮との間の軍事的な協力関係を完全に解消するように要請したと発表した。今回のジョセフユン氏のアジア歴訪の最終訪問地がミ...
アウンサンスーチー国家顧問は、2017年3月に国連人権理事会によって決定されていたロヒンギャ問題に対する調査ミッションの受け入れを拒否し、国際社会に衝撃が走った。 ミャンマー国内では、国軍系旧与党(USDP)の議員を中心に国連からの調査圧力に手緩い対応をすべきでないとの強硬論が勢いを増...
さる5月14日、アウンサンスーチー国家顧問は、北京で開催された一体一路経済圏構想首脳会談に出席した。 ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領、フィリピンのデュテルテ大統領など大物首脳が多数連ねる中、鮮やかな水色の美しいロンジー姿で、30か国を超える各国首脳との全体写真に納まったス...
バチカンでのローマ法王との面談を終えたアウンサンスーチー国家顧問は、英国に向かった。かつて軍事政権による自宅軟禁から解かれ自由の身になって以降、今や国政の事実上のトップの立場になってからも最も頻繁に訪れているのが英国だ。スーチー政権発足後でアジア以外の国で最初に訪れた国も英国であった。国家...
ミャンマーのティンチョー大統領が、2017年4月10日に中国を公式訪問した。 NLD新政権発足後、アウンサンスーチー国家顧問も、2016年8月に、日本への公式訪問(2016年11月)よりも早くに中国訪問を果たしていた。当時、日本への公式訪問が、中国やインド、イギリスなどに遅れること7か国...