文字サイズ
2015.04.27
小川 達大
ここ1年ほどで、Beer Clubなるものが急増しています。いわゆるディスコクラブや外国人向けのバーとは異なり、ベトナム人向けのビールを楽しむ店です。
弊社のオフィス近くのBeer Clubでは、暗がりの大音量の中で、会社帰りの若者達(入社1-3年目くらいのイメージです。中には、「未成年っぽいなぁ」という人達も)が、体を軽く揺らしながらビールを飲んでいます。この大音量の中では、会話が出来るとは思えませんが、「モ、ハイ、バー(1,2,3)。ヨー!」の掛け声だけで楽しくなれるものです。ビールの値段は一般的なローカルレストランよりは20-30%高いくらいで、食事にはあまり力を入れていないようです。店の前では、オシャレをした若者達が、待ち合わせをしています。店内の店員も、「ワタシ/オレ、Beer Clubで働いているの!」といった具合で、楽しそうです。
こういった店が、ここ1年ほどで、急増しているのです。
ベトナムは、ビール消費大国です。キリンビールによれば、ベトナムのビール消費量は、360万キロリットルで世界10位とのことです。タイが184万キロリットルで21位です。ちなみに、1位は中国の4,631万キロリットル、日本は549万キロリットルの7位です。ビールの単価が低いので、金額ベースの市場規模ではタイの方が大きいのですが、ベトナムのビール市場の大きさと潜在性が伺えます。
このブームの火付け役は、Vuvuzela(http://vuvuzela.com.vn/)というBeer Clubです。上記のBeer Clubよりは、もう少し落ち着いた雰囲気で、少し客単価の高い店です。現在、ハノイとホーチミンを中心に14店舗を展開しています。運営は、Golden Gate Restaurant Groupという会社です。この会社は、Ashima(キノコ鍋)、Kitchi-Kitchi(回転鍋(鍋の具が回転寿司のレーンのようなものに乗って店内を回っています))、Sumo BBQ(焼肉ブッフェ)、Gogi House(韓国焼肉)などを展開しています。業態開発のスピード感とテナントとの交渉力があり、非常に魅力的なレストランチェーンオペレーターだと思っています。また、展開している業態は、仕入れが共通している部分(牛肉やキノコなど)も多く、グループとしてのボリュームディスカウントも効いているように思います。また、「どうやら、この店(または、業態)は、うまく行きそうにない」という状況になった時の、見切りの早さも特徴的だと思います。
こういった新しい業態が生まれ、一気に広がっていくところに、ベトナム市場の「今」があるように思っています。つまり、国の経済水準が上がっていくにしたがって、消費者がいくつかのグループに分かれていき、それぞれのニーズが表出してきます。例えば、Beer Clubに関するニュース記事は、「ベトナムの路上レストランのように雑多な人々が集まる訳ではなく、似たような人が集まっていることが心地良い」とBeer Clubを利用する消費者の声を紹介しています。一方で、小規模ビジネスの新陳代謝が活発なので、魅力のありそうなビジネスがあれば、一気に広がっていくということになります。
さて、この流れは、日本企業にとって、チャンスなのか。実は、2015年1月から、100%外資での外食企業の設立が可能ということになっています。これまでは、ホテル建設等と同時でなければ外資企業による(合弁も含む)のレストランの開設は認められていませんでした。そのため、これまでは、ベトナム人またはベトナム法人名義での開設が行われてきたようです。詳細は、こちらのコラムをご覧いただければと思います。(ドウェイン・モリス・ベトナム法律事務所(オットー マンフレッド 倉雄氏)http://blogs.duanemorris.com/vietnam/?p=73)公式に発表していることと、実務が、一致しないところがベトナム展開の難しいところではありますが、外資企業へのチャンスが広がっている方向であることは間違い無いと言えるでしょう。
新しい飲食体験を求める中間層の増加は、日本企業にとって大きな事業機会です。同時に、外資規制の緩和という環境の変化。これからは、チェーンレストランが増えていくだろうと思っています。
それでは、ヘンガップライ!
小川 達大
Tatsuhiro Ogawa