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2015.10.13
小川 達大
9月27日は、中秋節でした。
中国文化の影響を大きく受けているベトナムでは、中秋節の時期になると、街中に提灯が飾られます。基本的には赤色の提灯なのですが、中にはドラえもんやピカチューの形をした提灯もあります。
中秋節の当日には、獅子舞を呼ぶようなこともします。中華街に住む大人と子供で結成された団体があるようで、その人達が人の集まるような場所に出張してきます。その場所は、夏祭りのような雰囲気になり、子供たちが舞っている獅子を追いかけまわして、逆に追いかけられて、とても楽しそうにしています。獅子に頭を齧られると1年間健康に過ごすことができる、というものらしいです。
また、日ごろお世話になっている人達に月餅を贈ります。丸や四角のケーキの中に、緑豆餡や鶏肉や塩漬け卵などが入っています。卵は月を意味しているようです。Kinh Do(キンドー)やBibica(ビビカ)などの大手菓子メーカーは、この時期になると路上に臨時店舗を出します。ずっと外に商品を置いているのに、いっこうに商品が傷まないというのも、少し不思議な感じがします。他にも、結婚式場の運営会社や外資系の菓子会社が、大きな贈答品市場を狙って参入しています。
私自身は、どうにも口に合わず克服できないでいます。妙にずっしりとしたボリュームと、甘さと塩辛さが同時にやってくる不思議な味。あの味を上手く表現できない文才の無さを悔やむばかりですが、果たして、あの味を言葉で表現できるのだろうか、とも思います。
ビジネスシーンでは、月餅だけでなくて、酒などを一緒に贈ることもあります。色々と作法があるようでして、酒の種類やランク(「日本企業から贈るならば、ラベルに大きく日本語が書いてあるべき」など)、菓子と酒の量のバランス(「シニアに対して、子供向けのお菓子が入っていては失礼だ」など)といったことを、ベトナム人の方に指導頂きながらやっております。
「贈り物」と言えば、ベトナムで話題になるのは、「良くない方の『贈り物』」です。いわゆる賄賂です。
国際的NGOのトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が、世界汚職認識ランキングを毎年発表しています。2014年のベトナムは、175か国中119位でした。2013年が116位、2012年が123位ですので、下位が続いている状況です。
この調査では、どの機関の汚職がひどいのか、ということも調べています。ベトナムでは、警察、役所、教育機関の3つが特に問題ありとされています。近くの国を見てみると、カンボジア(2014年ランキング156位)は、裁判所、警察、役所。インドネシア(同107位)では、立法機関、政党、警察。
汚職の背景は国によって違いますが、ベトナムについては、法律の整備が十分でないことを指摘する意見が多いように思います。整備が十分で無いために、現場(=警察、役所)の担当者が判断するケースが多くなり、賄賂による問題解決が発生しやすい、ということです。
しかしながら賄賂は、公正な競争を妨げるものですし、投資対象としての国の評価を下げます。トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)によると、腐敗指数の上昇と外国直接投資の減少との間には相関があるそうです。
ベトナムで企業活動する際には、この問題は避けては通れません。私自身、何度も、そのような場面に出くわしています。しかし、当然のことながら、Noというスタンスでやっていくべきだと考えています。単に「それがルール違反だから」ということもありますが、ステークホルダーと中期的に安定した関係を築き、透明性のある会計を実現するためです。ベトナムに腰を据えて事業をしていこうというのであれば、むしろ、クリーンにビジネスをしていく方が望ましいと思っています。
ちなみに、現地のコンサルティング会社などを使って、「自分は手を汚さずに」袖の下を通すようなことも行われていますが、自社であっても代理人であっても「支払った」と見なされます。
ベトナム政府も対応を強化しています。「ベトナム政府は、昔は汚職の存在を否定していた。最近は存在を認めるようになった。大きな進展だ」と言っている人もいます。また、賄賂の要求があった際に連絡できるホットラインも政府内で検討されているとのことです。
一足飛びに全てが解決するとは思いません。しかし、ベトナムの「あるべき発展の方向」を見据えながら、適切な態度を取っていく必要があると思っています。
それでは、ヘンガップライ!
小川 達大
Tatsuhiro Ogawa