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2016.04.04
小川 達大
ベトナムで経営戦略コンサルタントとして活動しておりますが、ここ数年、ベトナム企業から経営に関する相談を受ける機会が増えてきました。中期的な経営戦略を作る際のアドバイスを求めるような相談です。以前は日本企業からの投資を単に求めるような話が多く、その背景にあるのは資金不足というようなことでしたので、相談内容の変化を実感しているところです。
こういった変化の背景にあるのは、私どもの活動がベトナムで(か細いながらも)根を張りつつあることもあるかもしれませんが、むしろ、ベトナム企業が置かれている環境の変化だろうと考えています。
ある企業は、他社との競争がさらに激しくなっていくであろうことに危機感を抱いていました。その業界では、ベトナム国内外から新規参入が増えてきています。持続性のある自社の強みを明確にして、築き上げていくこと無しには、生き残っていくことが難しい状況です。
別のある会社は、上場を想定していました。株主に対して十分な説明責任を果たせるようなコミュニケーションを実現するためには、骨太な事業計画が必要と考えていました。
上場を想定する会社には、国営企業も含まれます。今ベトナムでは、国営企業の民営化が進められています。正確には、進めていこうという大号令がかかっています。国営企業としての後ろ盾を失い、激しい競争の場に投げ出されてもなお、生き残っていくためには、明確な事業方針が必要ということでした。
ベトナム企業が発展していくためには、①戦略的発想の強化と、②IR(インベスター・リレーション)コミュニケーションの改善が、課題であると私は考えています。経営戦略と事業計画に対する意識が高まっていくことが、これらの課題の解消に繋がるものと期待しています。
この流れは、ベトナムで活動する日本企業にとってもポジティブなものです。
ベトナム企業と提携や買収の交渉をする際、ベトナム企業側の事業計画の「不確かさ」が大きな問題になります。ベトナム企業が作る事業計画では、「夢」と「目標」と「それまでの道筋」が区別されることなく記載されていることが多いのです。それゆえ、日本企業側としては、事業計画の中のどこまでを確実性の高いものとして認めれば良いのか、判断がつきません。「情報が十分でないので、判断が出来ない日本企業」と「交渉相手が前向きな判断をしてこないので、これ以上の情報を出せないベトナム企業」ということで、交渉が初期段階で頓挫することも多いのが実態です。
ベトナム企業が充実した経営戦略と事業計画を持つようになれば、日本企業側の判断もしやすく、交渉が進みやすいものと期待できます。
それでは、ヘンガップライ!
小川 達大
Tatsuhiro Ogawa