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2016.12.12
小川 達大
今回は、ほとんど裏付けのない議論ですが、ハノイの旧市街を歩いていて、「ハノイが変わりつつあるかもしれない」という気がしてきましたので、そのことを書き留めておきたいと思います。
ベトナムは、首都・政治の街ハノイ市と、商業の街ホーチミン市という風に言われています。1年中熱気に溢れて東南アジアのイメージを凝縮したようなホーチミンに比べて、季節によっては肌寒く湿気の多いハノイはあまり活気が無いような印象を受けますし、どちらかと言えば東南アジア圏よりは中国圏の街並みのような印象もあります。
消費者の志向も大きく違っていて、新しいものを求めがちなホーチミンの人々に対して、ハノイの人々は伝統的なもの・安定したステータスがあるものを好みがちだと言われています。
したがって、(街並みの好みは別として)消費者向けビジネスでベトナムに進出する場合には、まずはホーチミン市で活動してみる、ということが、私の見聞きする限りでは、多いように思われます。
ところが、それもまた変わりつつあるように思います。ホアンキエム湖の周りは、今年の9月から、毎週金曜日・土曜日・日曜日は歩行者天国になっています。タクシーでの移動が少し面倒になりますが、ゆったりとした雰囲気が流れていて、とても気持ちの良い場所になっています(タクシーの運転手に、ホアンキエム湖の周辺に行ってほしいと言うと、「その道には入れない」という旨のベトナム語で反論されて、ちょっとしたトラブルになりますが…)。観光客をターゲットにしたオシャレなレストランも増え、ハノイ現地の方々もそういったレストランを利用するようになっています。少し洒落たバーのカウンターでは、20代30代のベトナム人が、一眼レフカメラを触りながら、葉巻を燻らせ、シングルモルトのウィスキーを飲んでいます。所得水準が上がっていくなかで、消費感度の向上と、提供商品・サービスレベルの向上が、相乗効果をもたらしているように見えます。
背景の1つとしては、ハノイの再開発もあると思います。ハノイの西部には新市街の開発が進んでおり、大規模な商業施設・オフィスビル・集合住宅が開発されており、人と活動が移転しています。そのため、ホアンキエム湖周辺などの旧市街は、観光地として発展していくことができ、消費文化が醸成していく環境にあるのでしょう。
ハノイとホーチミンで消費者調査をしていると、ホーチミンの人々は、アメリカやオーストラリアに親戚や友人がいるケースが多いことが分かってきます。そういった人々は、何か新しいもの・高価なものを買いたいときには、海外に買いに行く/買ってきてもらうということをします。一方で、ハノイの人々は、もちろん海外に買いに行く、ということもするのですが、相対的に言えば、国内に持ち込まれた商品やサービスを消費していることが分かります。大雑把なイメージで言えば、高品質のものについては、ホーチミンの人々は海外に消費しに行き、ハノイの人々は輸入して消費する、ということです。
輸入してから消費をする、ということは、海外から来た文化が国内で自国の文化と出会い、互いに融合しながら発展していくことがある、ということです。日本は海外からの文化の輸入と咀嚼に優れていると言われることがありますが、それに近いものがあるのかもしれません。
ベトナムの歴史、東南アジア文化の影響、中国文化のエッセンス、フランス植民地時代の名残、先進国からの輸入。それらが混じり合いながら発展していくハノイの街は、ホーチミンとは違った形で東南アジアの特徴を持っており、今、とても興味深いステージにあるように感じています。
以上、ハノイも素敵な街なので、ぜひ訪れてみてください、という内容でした。
それでは、ヘンガップライ!小川 達大
Tatsuhiro Ogawa