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宍戸 徳雄
Norio Shishido
前回のコラムで、スーチー政権が現在直面し打開策を見いだせずにいるロヒンギャ問題について触れました。そのロヒンギャ問題に対する国際社会の非難も日を追うごとに高まっている。 先週、国連の報道官が、ミャンマーによるロヒン...
2016年の歴史的な総選挙の勝利と新政権発足からおよそ1年が経過しようとしている。国民からの圧倒的な支持を受けたスーチー政権は、スーチー氏の行政府における法的立場、政権を担う人材不足、国軍との関係、そして少数民...
前回は、新ミャンマー投資法が規定する土地使用権の取り扱いの変更について解説しました。今回は新投資法の枠組みの解説としては最終回となりますが、現地労働者の雇用義務の取り扱いの変更点について説明したいと思います。...
前回のコラムでは、新投資法の定める投資規制事業の内容とその分類について説明しました。今回のコラムでは、新投資法上その取扱いが大きく変更された土地使用権についての説明をしたいと思います。...
前回のコラムでは、新しく成立した新投資法の趣旨や全体的な改正のポイントを解説しました。今回のコラムでは、投資規制事業の内容とその分類について説明をしたいと思います。...
既往まで、ミャンマー内国投資法と外国投資法が併存し、相互の規定、法解釈、及び運用上の祖語や、不明確且つ恣意的な規定も数多くあり、運用者並びに投資者ともに、使い勝手の良い法律とは言えなかった投資法。先般、ミャンマー連邦議会(上院、下院)を...
昨9月14日、アウンサンスーチー国家顧問兼外務大臣は、政権発足後、初めてアメリカを訪問し、ホワイトハウスでオバマ大統領と会談した。
オバマ大統領は、その席で、1997年以来アメリカが課してきたミャンマーへの経済制裁をまもなく解除すると明言した。アメリカは、これまで、ミャンマーの民主化の進展をモニタリングしながら、民政移管後の前...
2016年8月24日、ミャンマー中北部でマグニチュード6.8の大地震が発生、震源地から北方に約30kmに位置する世界三大仏教遺跡の一つであるバガン遺跡も数百の仏塔や寺院が損壊するという甚大な被害を被った。バガンは、カンボジアのアンコールワット、インドネシアのボロブドゥールと並び世界三大仏教遺跡の一つと称されている。ここには、かつてバガン王朝の...
日系小売最大手のイオン株式会社は、ミャンマーにて小売業を営む企業(Creation Myanmar Group of Companies Limited)と合弁会社(AEON Orange Co.,Ltd)を設立し(資本金USD8.1M)、ミャンマーの小売業へ参入することを発表した。日系大手小売業のミャンマー進出は、これが初となる。イオングループは、ミャンマーの民政移管後の前政権時より、総合小売...
このコラムの第22回~25回で、NLD新政権の掲げている政策について具体的に分析をしてきました。新政権発足からおよそ100日が経過したが、すでに新政権が公約を実現したいくつかの政策がある。新政権は、行政府の無駄を省き、公務員による汚職撲滅を進めるなど、まずは身内の体制整備に着手している。そのうちの目玉が、中央政府省庁の削減だ。具体的には、...
先月22日、アメリカのケリー国務長官がミャンマーを訪問、ティンチョー大統領、アウサンスーチー国家顧問兼外務大臣と会談した。NLD新政権誕生後としては、初のアメリカ政府高官によるミャンマー訪問となった。ケリー国務長官は、ミャンマーの民主化の進展を引き続き支援すると述べ、アメリカのNLD政権への強い支援スタンスを明確に表明した。ケリー国務長官訪問の...
アウンサンスーチーNLD党首が率いるNLD新政権が発足し、彼女自身は国家顧問兼外相として外交デビューも果たした。現在、ミャンマーの議会において、正式に国家顧問省を新設するための立法作業が進んでいる。本コラムにおいて過去数回に亘りNLDの主要政策の分析をしてきましたが、第22回、第23回のコラムでそれぞれ分析した通り、国民和解と法の支配の実現が、アウンサン...
2016年4月、NLD新政権は、ティンチョー新大統領以下、NLDの主要幹部を中心として組閣し船出をした。アウンサンスーチー党首は、大統領府大臣と外務大臣の2大臣を兼務。行政府に入ることで、法的に、党務と立法府への影響力の行使が出来なくなったことを補完する趣旨で、「国家顧問」というポストを新設。アウンサンスーチー党首の党並びに立法府への影響力行使の法的根拠を確...
先般、ミャンマー議会において、大統領選出手続きが行われ、現憲法の規定では大統領には就任できないアウンサンスーチーNLD党首の昔からの側近であるティンチョー氏が、大統領に就任する予定となった。ティンチョー氏は、スーチー党首の高校時代の同級生で、ヤンゴン経済大卒、オックスフォード大学への留学経験もある。財務省などで行政経験もある。作家であった父親ミントゥ...
NLD(国民民主連盟)の圧勝に終わった2015年のミャンマー総選挙。政権移行に向けて、軍との和解や政府との連携を模索しているアウンサンスーチーNLD党首。選挙に圧勝したのはよいが、政権移管後のNLDの政権運営能力に対し、国内外、特にミャンマーへの投資をしている経済界、産業界から不安の声が広がっている。NLDには人材が不足しており政策立案能力がないのではないかという指...
2016年2月1日には、昨年の総選挙の結果を受けて新しい議会が招集される。軍の旧トップとの歴史的な和解を果たしたNLDのアウンサンスーチー党首は、ミャンマー連邦議会、軍、現与党USDPとも連携しながら、着実に政権移行の準備を進めている。NLDへの政権交代後の投資環境の変化を見極めようと、外国企業は積極的な動きを見せている。特に顕著な動きを見せているのが、米系企業だ。...
1万人以上の海外からの監視団を受入れ実施されたミャンマーの総選挙。選挙結果の確定値は、改選議席491議席の内、アウンサンスーチー議長率いるNLD(国民民主連盟)が過半数を獲得し390議席、現与党であるUSDPが42議席、その他の地方政党や民族政党などが59議席という結果に終った。軍人の固定席である議会の4分の1の議席である166議席を考慮しても、NLDが議会で単独...
2018年11月8日、ヤンゴンの街中は、選挙投票日の喧騒というよりは、いつもよりも静寂な雰囲気に包まれていた。「世の中が変わる」、何かそんな雰囲気が漂いながらも、人々は落ち着いた感じで、早朝から投票所に列をなし、粛々と投票を済ませた。即日の開票作業が遅々として進まない中、夕方ころ、最大野党NLD(国民民主連盟)が独自の集計作業の速報をアナウンスし始めると、ヤンゴ...
ミャンマーは仏教国として有名である。日本人は映画「ビルマの竪琴」の仏僧をイメージする人も多いだろう。ミャンマーの仏教は、日本の大乗仏教と異なり、非常に厳しい戒律の遵守を重んじる上座仏教である。タイやラオス、カンボジアなども上座仏教の国である。ミャンマー国民の約90%が仏教徒で、世界最大数の出家僧を擁する。出家をして寺院に入り、毎朝托鉢に回り功徳を積む。歴史的...
今年7月中旬から8月上旬にかけて降った季節風の影響による記録的な豪雨により、ミャンマーはここ50年で最悪の洪水被害が発生しました。この豪雨と重なる形で、ベンガル湾で発生したサイクロンによる影響も事態を悪化させる原因となりました。被害状況としては、ミャンマーの14管区および州のうち、12管区および州において、洪水被害が発生しました。中でも最も深刻な被害を受けた地域は...
2014年10月、ミャンマー政府は、邦銀3行を含む外国銀行9行に対して、ミャンマーでの銀行業ライセンスを許可した。当初邦銀は2行の枠のみと噂されていたが、ふたを開けてみれば日本のメガバンク3行が全て許可を得たことは、他の外国勢に衝撃が走った。特に、許可銀行がゼロであった韓国勢にとっては青天の霹靂だった。日本勢に続いたのが、シンガポール勢の2行だ。中国、タイ、オーストラ...
2011年3月、SPDC(国家平和発展評議会)は解散し、2008年ミャンマー連邦共和国憲法下で初の大統領となるテインセイン政権が発足した。テインセインは元軍人であるが、民政移管を実現した形での文民政権であり、議会において一定の軍の影響力(4分の1の固定議席)があるものの、ミャンマーにおいて名実ともに初の民主政権が発足することとなった。テインセイン大統領は、就任後、矢継ぎ早...
1988年の大規模な民主化運動によって、ネーウィンによる社会主義体制は崩壊したが、国軍が民主化デモを鎮圧し、その後、国政を掌握し政権の座に就いたのは軍事政権であった。この軍事政権は、軍のトップであったソーマウン、そして後継のタンシュエと、その後20年以上に亘り続くことになる。軍事政権は、ネーウィン政権による社会主義経済システムの停滞から脱するため、外資導入や市場経済...
今までのコラムでは、経済や政治を中心に見てきましたが、ここからは、少しミャンマーの歴史を概観していきたい1948年、ビルマは長く続いたイギリスの植民地支配からの独立を果たした。イギリス政府と粘り強く独立交渉に尽力したのが、ビルマ建国の父として国民から愛され続けているアウンサン将軍だ。現在最大野党(NLD)の党首であるアウンサンスーチー女史の父だ。彼は、イギリスからの独...
今年2015年11月に、10年ぶりの立法府の総選挙が行われることは、本コラム8回、9回で書きました。この立法府である議会の総選挙と、大統領の選出選挙は異なる制度です。メディアも含め、制度的な理解が間違っていることが多いので、本コラムにて正確にミャンマーにおける大統領選出制度について解説をしたいと思います。実際に本コラムの読者からも、大統領の選出制度についていくつか問い合...
アウンサンスーチー女史率いるNLD(国民民主連合)は、民政移管後のミャンマーにおいて、憲法改正がなければ真の民主化の実現はないと主張してきた。目前に控えた2015年の総選挙も憲法改正を行って後に選挙をすべきとの主張を続けてきた。しかし、それは時間切れで実現は難しい情勢だ。誤解や間違った報道も多いが、2008年に成立した現在の憲法は、有効な国民投票を経て国民の9割以上の賛成を...
2015年1月1日、テインセイン大統領は、年頭のあいさつで、少数民族の自治権を拡大させる形の連邦制を、相互の対話の下に実現できると信じている述べ、少数民族問題の解決に向けて、積極的に取り組む姿勢を示した。ミャンマーには、約135の少数民族(政府公式発表)がいると言われている。その70%程度がビルマ族で、その他カレン族、シャン族など、数多くの少数民族がいる。過去、ミャンマーの...
2015年の年頭、ミャンマーの選挙管理委員会は、2015年10月下旬から11月上旬に総選挙を行うことを発表した。5年前の総選挙(2010年11月)では、アウンサンスーチー女史率いるNLDは、選挙をボイコットした経緯がある。結果として、現政権与党であるUSDPが圧勝したわけであるが、今年の総選挙に、NLDは参加するのであろうか、世界中が注目している。そのような中、2014年12月30日、アウンサンスー...
ミャンマーにとって、2015年は、民主化後約3年の成果が判断される総選挙が行われる年である。2014年、ミャンマーは、ASEAN議長国として、その役割をきっちりと実行した。11月のASEAN首脳会議+東アジア首脳会議において、テインセイン大統領は、オバマ大統領、日本の安倍首相、中国の李首相などと会談した。民政移管後の成長と民主化の成果について一定程度アピールできたと言える。ASEAN会議議長...