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COLUMN コラム

アジア最後のフロンティア 激動するミャンマー

2015.09.07

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(16) 『ミャンマーにおける外銀の攻勢が始まった』

宍戸 徳雄

UOBヤンゴン支店オープニングセレモニー

2014年10月、ミャンマー政府は、邦銀3行を含む外国銀行9行に対して、ミャンマーでの銀行業ライセンスを許可した。当初邦銀は2行の枠のみと噂されていたが、ふたを開けてみれば日本のメガバンク3行が全て許可を得たことは、他の外国勢に衝撃が走った。特に、許可銀行がゼロであった韓国勢にとっては青天の霹靂だった。

日本勢に続いたのが、シンガポール勢の2行だ。中国、タイ、オーストラリア、マレーシアは各1行が許可された。
ミャンマー政府は、邦銀3行に対して許可を与えたことについて、日本企業のミャンマーへの進出・投資を促進する上で、邦銀3行のバックアップが必要不可欠で、その役割に対する大きな期待を持っていると、説明した。
日本政府は、ティラワ経済特区を始めとした経済産業インフラ分野、人材育成分野、証券市場開設など金融制度分野など、様々な分野で、ミャンマー支援を行っている。そのような官民あげたオールジャパンによるミャンマー支援も評価されたものと思われる。

許可を受けた邦銀3行の内、三菱UFJ銀行と三井住友銀行は2015年初春早々に営業を開始。華々しくオープニングセレモニーを行ったが、当面は、日本企業向けの外為業務、貸出業務のみを行うとしている。
これに続くシンガポール勢も営業を開始。シンガポールのUOB銀行のオープニングセレモニーで、UOB頭取は、ミャンマーにおけるロングタームローンなどの開発も積極化して、長期産業金融としてミャンマー経済の成長に貢献したいと宣言。邦銀が日系企業向けの銀行業務を主とするスタンスに対して、UOBは、ローカルのミャンマー企業に対しても積極的に融資を行い、ミャンマー人の雇用を創出し、ミャンマー人の所得を向上させるような産業育成・企業育成も銀行として力を入れていくとアピールした。セレモニーの会場にいたミャンマー財務大臣、ミャンマー中銀総裁は、このスタンスを讃え、大きな賛辞を送った。実際に、セレモニーの会場で、いくつかのプロジェクトに対するローンの調印式まで同時に行うという演出まで用意されていた。

ミャンマーにおける銀行業務については、許可を受けた外国銀行の業務範囲も法律上不透明な部分も多く、当面は、行政裁量に依存する局面が続くと思われる。ミャンマー企業向けの融資業務などについて、日本勢は、日本政府とも協力し、ローカル銀行向けに、与信審査のシステムやノウハウについての人材育成・教育支援を行う形で貢献しようとしている。これは大変意義深い支援の形と評価できる。
他方、シンガポール勢のように、リスクをとって積極的に自らの業務範囲を拡大させ、ミャンマーの産業育成の名の下に、ビジネス機会の構築を進めていくアグレッシブなスタンスは、今後、邦銀にとって大きな脅威となるだろう。
アジアの金融覇権をかけて、日本勢とシンガポール勢が、ここミャンマーで激突する。今後の展開から目が離せません。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE
株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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