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2016.08.15
宍戸 徳雄
日系小売最大手のイオン株式会社は、ミャンマーにて小売業を営む企業(Creation Myanmar Group of Companies Limited)と合弁会社(AEON Orange Co.,Ltd)を設立し(資本金USD8.1M)、ミャンマーの小売業へ参入することを発表した。日系大手小売業のミャンマー進出は、これが初となる。
イオングループは、ミャンマーの民政移管後の前政権時より、総合小売業としてのミャンマー市場への参入を検討してきていた。しかし、前政権時より度重なる法制度の改正や規制緩和などが行われつつも、外資企業による本格的な小売業の参入の壁は高く、参入できずにいた。イオンは、当初、大型のショッピングセンターの開発・出店を目指していたが、用地の取得の困難性から、今回、現地企業の店舗資産の譲渡を受ける形で、スーパーマーケット事業への参入という形でのミャンマー進出を実現した。
新合弁会社AEON Orange Co.,Ltdは、Creation Myanmar Group of Companies Limitedの子会社であるHypermartが運営している既存店舗14店舗の資産譲渡を受け、日本におけるイオングループのスーパーマーケット事業のノウハウを活かし、地域ニーズに合致し、地域に密着した商品調達や、日本スペックの品質管理、そしてITを活用した物流の仕組みなどを提供していく。将来的には、イオンのPBブランドである「トップバリュー」商品の導入も行う方針だ、また、イオンは、ミャンマーにおける新会社において、日本における人材育成の仕組みやノウハウなども提供していく予定だ。
Creation Myanmar Group of Companies Limitedは、ミャンマー最大の経済都市ヤンゴンを中心に、14店舗のスーパーマーケット事業を展開するほか、20を超える欧米ブランドを中心とした販売ライセンスを保有して専門店事業も行っている。専門店事業では130店舗もの店舗網を有する。同社は、都市部だけでなく郊外も含めた小売商圏における店舗展開のノウハウと商品調達のノウハウを有しており、イオングループとの共同事業により、その強みをさらに強化し、店舗展開を拡大させる。
イオンは、今回の小売業の事業開始に先立ち、2012年には、マイクロファイナンス事業でのミャンマー参入を実現していた。同事業を行うAEON MICROFINANCE (MYANMAR) CO.,LTD.は、2013年より割賦金融事業を開始している。現金経済ベースのミャンマーにおいて個人金融分野において信用経済の基礎を創る同社の事業も、ミャンマーにおける消費経済の仕組みを支える一環となる事業である。イオンの店舗では、食品、日用雑貨を中心に、家電商品なども取り扱う予定であるが、割賦金融の仕組みの導入は、かつて日本でも高度経済成長期における個人消費を支えた基盤となったように、ミャンマーの消費経済を支える基盤となることが期待される。
これらの事業活動の他にも、イオングループは、ミャンマーにおいて様々な社会貢献活動を行っている。2013年より、公益財団法人イオン環境財団は、 環境保全活動の一環として、ヤンゴン郊外にある湖の水源涵養機能を回復させるために、植樹活動を行っている。すでに2万本以上の植樹を行ってきた。また、小学校施設が不足するミャンマーにおいて、学校建設の支援事業も行っている。2012年以来、35校もの建設の支援を行ってきた。
このように、イオングループは、ビジネス的な事業活動に加え、その地域における社会貢献活動も実践している。イオンは、グループの共通戦略として「アジアシフト」を掲げているが、グループ一体となった成長戦略を推進する中、アジアの各地域における社会的な課題とも向き合い、その解決のための貢献活動を併行して実践している点は、日本企業のアジア進出の模範たるモデルであると評価できる。
今回のイオンによるミャンマーへの本格的な小売事業での参入は、イオンの本業分野として、ミャンマーの小売業の近代化実現への貢献が大きく期待されている。イオンがこれまでもアジア各国で行ってきた豊かな消費文化の構築こそ、ミャンマー国民の平和な暮らしづくりの基礎となるであろう。同時に、イオングループには、これまでも実践してきた他分野における社会貢献活動でも日本企業の模範たる存在として活躍されることが期待される。
宍戸 徳雄
Norio Shishido