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2016.11.07
宍戸 徳雄
既往まで、ミャンマー内国投資法と外国投資法が併存し、相互の規定、法解釈、及び運用上の祖語や、不明確且つ恣意的な規定も数多くあり、運用者並びに投資者ともに、使い勝手の良い法律とは言えなかった投資法。先般、ミャンマー連邦議会(上院、下院)を通過し、新投資法が成立した。新法は、内国投資法と外国投資法を統一したもので、投資にかかわる統一的な法制度の創設として歓迎される。拙著「ミャンマー進出ガイドブック(プレジデント社、2013)」では、主として当時成立した外国投資法について詳細を解説したが、あれから3年が経過し、NLDへの政権交代を経て、今まさにミャンマーへの投資環境の本格的な整備は、世界各国からの投資家の期待に応えるものにならなければならないタイミングである。
今回から数回に分けて、新ミャンマー投資法の内容を解説していきたい。
今回は、新法によって変わった外国投資規制に対する大きな枠組みを概説したい。
1.統一的な投資規制
まず、新投資法は、外国投資に関する統一的規制の枠組みを想定したものとなっている。これまで、外国投資規制については、旧外国投資法の他、国営企業法、MIC通達、会社法、不動産移転制限法などの個別法や行政規則等によって、それぞれにおいて整合性のない制度的枠組みとなっていた。この整合性のない制度的な枠組みが、行政による恣意的な判断を生み出す温床となり、ミャンマー投資に関わる法制度全般に対する不明確性と不透明性から投資家の信頼を損ねる常態を生じさせていた。
新投資法は、外国投資を含む国内外のすべての投資に対する統一的な枠組みを提供することで、投資規制に関する判断は、すべて新投資法に基づき行われることになる。
したがって、今後、国家の独占事業を規定していた国営企業法や、不明確な営業許可制度を規定していた会社法などは、廃止ないし改正が見込まれる(現在、議会へ上程前の新会社法案においては、外国企業に対する営業許可制度は廃止される見込み)。
2.MIC(ミャンマー投資委員会)の位置づけと機能の変更
これまでの外国投資法に基づく規制事業(会社法上の投資は除く枠組み)は、すべてMICの許可を受けなければならないという制度的な枠組みがあった。同時に、外国投資法上の規制事業においてMIC許可を受けなければ、外国投資法上の税務上の恩典措置なども享受することができない枠組みとなっていた。
新投資法では、このようなMICの許可を前提とする制度は原則廃止され、その許可を必要とする対象事業が限定的なものとなった(新投資法36条、37条)。また、外国投資法上の規制事業に限定して認められていた税務上の恩典や不動産の長期リース権の取得などについて、MIC許可を前提として付随するものではなく、規制事業以外のすべての投資に対しても、別途承認を得れば享受できる余地が生まれた(新投資法37条)。制度的には、恩典の享受と規制事業のMIC許可の手続きが分離・区別された点が大きな変更点といえる。
3.投資規制の大枠
*新投資法上での規制事業の内容詳細については、次回以降のコラムにて解説する。
新投資法が定める投資規制の枠組みは、概観するに、
(1)禁止事業(新投資法41条)
(2)MIC許可を必要とする事業(新投資法36条)
(3)制限事業(新投資法42条)
(4)ミャンマー連邦議会への確認を必要とする事業(新投資法46条)
上記(3)内に規定されている外国投資のみ制限されている事業(同条2項)や、ミャンマー内国企業との合弁でのみ認められる事業(同条3項)については、別途新しい通達告示等で定められるが、新通達告示等が定められるまでの経過規定(新投資法92条)が置かれており、既存の通達告示の存続が規定されている。当面は、現行の通達告示等において詳細に分類規定されている制限事業やミャンマー企業との合弁事業などは、引き続き運用上その許可判断において基準となることは間違いないだろう。
宍戸 徳雄
Norio Shishido