文字サイズ
2016.12.05
宍戸 徳雄
前回のコラムでは、新しく成立した新投資法の趣旨や全体的な改正のポイントを解説しました。今回のコラムでは、投資規制事業の内容とその分類について説明をしたいと思います。
前回のコラムで説明した新投資法が定める投資規制の大枠は、以下の通りでした。
(1) 禁止事業(新投資法41条)
(2) MIC許可を必要とする事業(新投資法36条)
(3) 制限事業(新投資法42条)
(4) ミャンマー連邦議会への確認を必要とする事業(新投資法46条)
*以下の翻訳内容については正確性を保証するものではありません(訳者:宍戸)。
以下、それぞれにつき、新投資法上の明文規定を見ていきましょう。
まず、内国企業、外国企業を問わず、禁止される事業として、新投資法41条は以下の通り、禁止事業を規定しています。
(1)禁止事業
a.国家に有害な物を持ち込む事業
次に、新投資法36条は、MIC(ミャンマー投資委員会)の許可を必要とする事業として、以下の通り、規定しています。見ての通り、これらの明文規定は、あいかわらず抽象的であいまい不明確であることは否めず、告示や通達などにより、内容が具体化されることが期待されます。
(2)MIC許可を必要とする事業
a.国家戦略上重要な事業
尚、旧外国投資法上では、MIC許可と長期の土地使用権や税制上の恩典の付与がリンクしていた点は前回のコラムでも指摘していますが、上記新投資法36条のMIC許可を必要とする事業以外の場合(MIC許可を必要としない事業)でも、土地使用権や税制上の恩典を享受することが可能であること(許可と恩典がリンクしない)が、36条の直後の規定である新投資法37条においてはっきりと明文化されています。当該恩典の手続きについては、当然に投資許可とはリンクしない別の手続きになるため、その手続き詳細について今後の実務運用に注目しなければなりません。
そして、新投資法42条は、制限事業として、以下の通り規定しています。
(3)制限事業
a.国家のみ行うことができる事業
尚、a項に関連して、現行の国営企業法を参照すべきと思料します。
現行法上の国家独占12 業種は、
a.国内外におけるチーク材の伐採及び販売
b.森林の植林及び保全(村民が個人消費用に植林した村所有の薪の採取を除く)
c.石油、天然ガスの採鉱、採掘、販売、製品生産
d.真珠、ヒスイ、その他高価な宝石の探索、採取、輸出
e.政府調査により留保されている魚類、エビの養殖と生産
f.郵便、通信事業
g.航空、鉄道事業
h.銀行、保険事業
i.放送、テレビ事業
j.金属の探索、採掘
k.発電事業(民間及び共同発電事業を除く)
l.安全保障と防衛に関連する製品の生産(適宜政府が通知)
となっています。
b項~d項については、前回のコラムでも簡単に述べた通り、新投資法の規定に対応した新しい告示や通達が発布されるまでは、現行の告示通達を参照すべきと思料します(なお、経過規定は、新投資法92条)。
最後に、新投資法46条は、ミャンマー連邦議会への確認が必要な事業を規定しています。同規定も抽象規定であることから、今後、告示等で具体化されることが期待されます。
(4)国家および国民の安全、経済状況、環境、国家利益に重大な影響を与える事業
以上、今回のコラムでは、新投資法が定める投資規制事業の内容とその分類について説明しました。これらの法規定に基づき投資判断をすることが前提となりますが、従来の通り、法律自体の規定は抽象規定であることから、その投資判断や手続きの詳細については、新投資法に適応した告示や通達の発布を待たなければなりません。
宍戸 徳雄
Norio Shishido