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COLUMN コラム

アジア最後のフロンティア 激動するミャンマー

2016.12.05

アジア最後のフロンティア「激動するミャンマー」(32) 『新ミャンマー投資法の枠組み その2 投資規制事業の内容と分類』

宍戸 徳雄

政権与党となり新築されたNLDの本部(ヤンゴン)

前回のコラムでは、新しく成立した新投資法の趣旨や全体的な改正のポイントを解説しました。今回のコラムでは、投資規制事業の内容とその分類について説明をしたいと思います。

前回のコラムで説明した新投資法が定める投資規制の大枠は、以下の通りでした。

(1)     禁止事業(新投資法41条)
(2)     MIC許可を必要とする事業(新投資法36条)
(3)     制限事業(新投資法42条)
(4)     ミャンマー連邦議会への確認を必要とする事業(新投資法46条)

*以下の翻訳内容については正確性を保証するものではありません(訳者:宍戸)。

以下、それぞれにつき、新投資法上の明文規定を見ていきましょう。
まず、内国企業、外国企業を問わず、禁止される事業として、新投資法41条は以下の通り、禁止事業を規定しています。

  1. (1)禁止事業

    a.国家に有害な物を持ち込む事業

  2. b.研究開発目的以外で、国外において試験中又は使用許可が得られていない非実用段階にある技術、薬品、動植物や農産物を持ち込む事業
  3. c.国家の伝統文化や民族習慣などに悪影響を与える事業
  4. d.公衆衛生に悪影響を与える事業
  5. e.環境やエコシステムに悪影響を与える事業
  6. f.法律に基づく禁制品の製造

次に、新投資法36条は、MIC(ミャンマー投資委員会)の許可を必要とする事業として、以下の通り、規定しています。見ての通り、これらの明文規定は、あいかわらず抽象的であいまい不明確であることは否めず、告示や通達などにより、内容が具体化されることが期待されます。

(2)MIC許可を必要とする事業

a.国家戦略上重要な事業

  1. b.多額の資本を要する事業
  2. c.環境や地域社会に大きな影響を与える事業
  3. d.国家が所有する土地・建物を使用する事業
  4. e.別途政府が定める事業は許可を得なければならない

尚、旧外国投資法上では、MIC許可と長期の土地使用権や税制上の恩典の付与がリンクしていた点は前回のコラムでも指摘していますが、上記新投資法36条のMIC許可を必要とする事業以外の場合(MIC許可を必要としない事業)でも、土地使用権や税制上の恩典を享受することが可能であること(許可と恩典がリンクしない)が、36条の直後の規定である新投資法37条においてはっきりと明文化されています。当該恩典の手続きについては、当然に投資許可とはリンクしない別の手続きになるため、その手続き詳細について今後の実務運用に注目しなければなりません。

そして、新投資法42条は、制限事業として、以下の通り規定しています。

(3)制限事業

a.国家のみ行うことができる事業

  1. b.外資が行うことを禁止する事業
  2. c.ミャンマー内国企業やミャンマー人との合弁においてのみ許可される事業
  3. d.関係当局の許可を必要とする事業

尚、a項に関連して、現行の国営企業法を参照すべきと思料します。

現行法上の国家独占12 業種は、

a.国内外におけるチーク材の伐採及び販売
b.森林の植林及び保全(村民が個人消費用に植林した村所有の薪の採取を除く)
c.石油、天然ガスの採鉱、採掘、販売、製品生産
d.真珠、ヒスイ、その他高価な宝石の探索、採取、輸出
e.政府調査により留保されている魚類、エビの養殖と生産
f.郵便、通信事業
g.航空、鉄道事業
h.銀行、保険事業
i.放送、テレビ事業
j.金属の探索、採掘
k.発電事業(民間及び共同発電事業を除く)
l.安全保障と防衛に関連する製品の生産(適宜政府が通知)
となっています。

b項~d項については、前回のコラムでも簡単に述べた通り、新投資法の規定に対応した新しい告示や通達が発布されるまでは、現行の告示通達を参照すべきと思料します(なお、経過規定は、新投資法92条)。

最後に、新投資法46条は、ミャンマー連邦議会への確認が必要な事業を規定しています。同規定も抽象規定であることから、今後、告示等で具体化されることが期待されます。

  1. ミャンマー連邦議会への確認を必要とする事業

(4)国家および国民の安全、経済状況、環境、国家利益に重大な影響を与える事業

以上、今回のコラムでは、新投資法が定める投資規制事業の内容とその分類について説明しました。これらの法規定に基づき投資判断をすることが前提となりますが、従来の通り、法律自体の規定は抽象規定であることから、その投資判断や手続きの詳細については、新投資法に適応した告示や通達の発布を待たなければなりません。

宍戸 徳雄

Norio Shishido

PROFILE
株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンス 代表取締役。1997年株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)に入行。法人営業部等歴任し主としてコーポレートファイナンス、外国業務に従事。2012年独立、アジア総合法律事務所のシンクタンク(調査研究機関)である株式会社アジアリーガルリサーチアンドファイナンスを設立、代表に就任。アジア地域の法制度・判例、行政運用などの調査、ビジネス環境・マーケット調査などをメイン業務としながら、数多くの日本企業のアジア進出の実務サポートも行う。民主化直後のミャンマーにも拠点を設置(ヤンゴン)、ミャンマー政府関係者、ローカル企業にも幅広い人脈を有する。2014年にはシンガポールに法人を設立、代表に就任、アジアの起業家を結びつけるネットワークNew Asia Entrepreneur Business Network代表(シンガポール)。著書に「ミャンマー進出ガイドブック」(プレジデント社)、連載記事「沸騰ミャンマー投資1~3」(プレジデント社)などがある。その他金融機関や商工会議所等にて、アジア進出に関わる多数の実務セミナー・講演活動を行っている。一般社団法人日本ミャンマー協会所属。

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