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COLUMN コラム

悠久の国インドへの挑戦

2015.06.08

「悠久の国インドへの挑戦」20 コストダウンと組織運営 その3

藤崎 照夫

ジョードプルは、インドのラージャスターン州の都市である。 旧市街の家屋の壁が青く塗られている事から、愛称ブルーシティーと呼ばれる。

先月号では全社的活動、営業部門、購買部門におけるコストダウン活動について触れましたが、今月はその他の部門での活動について述べたいと思います。

④総務部門:

総務部門にはこのコストダウン活動の事務局として全社的活動の取りまとめや実績管理などを実施してもらいましたが、部門活動としては毎日従業員の通勤に30台ぐらいのバスをチャーターしていましたので安全及び時間の順守を前提として契約更新の時期に合わせて利用会社の変更や使用料の値下げ交渉をしてもらいました。また社員が毎日利用する社員食堂は「食堂運営委員会」で食材の手配、メニューなどを決めていましたが、質や量を落とさないことを配慮しながら食材の仕入先の見直しなどを検討してもらいました。
更に社内の文房具やコピー用紙などの所謂消耗品の管理も総務部でしたので、これらの削減も実施してくれました。

⑤経理部門:

経理部門の最も大きな削減テーマは借入金利の削減でした。立ち上がり時に総額で数十億円の借り入れがあり、当時は借入金利が14~5%でしたので毎年大きな金額の金利の支払いを行っていました。それで数行あった取引銀行と金利引き下げ交渉を進めるだけでなく、場合によっては借入銀行を変更するなど大変でしたがコストダウンに結び付けてくれました。
また経理部門はIT課も管理していましたので社内の様々なシステム管理の見直しをすることにより在庫の削減などにトライしてくれました。

⑥生産部門:

この部門が全社の中で一番要員も多く(約50%以上)製品を生み出す工程も多岐に亘るので、コストダウンの可能性は一番高いと考えていました。この部門では色々なコストダウンが実施されましたが、その中で私の記憶に残るものをいくつか列挙してみたいと思います。

-工場で生産された車両を販売店に配送する際に広大なインドで道路状況もよくないので、運送中の損傷を避けるため全ての車のボンネットやルーフ部分を発砲スチロールでカバーしていました。しかし調べてみると、近距離の販売店や道路が良く舗装されているルートでは必要がないことが分かりました。それで対象となる販売店を決めて、そこへ搬送する車両にはカバーを外しました。これは金額的にかなり大きくて数百万円の削減になりました。

 

-金額は小さいものでしたが、工場の現場で空気を送るホースが使用されていました。これをアイディアで少し短く出来ることが分かり、1台当たり数円でしたがコストダウンになりました。また作業中に使用する手袋も一度使用した物を洗濯して再利用するなど本当に沢山のアイディアが出されました。

これらコストダウンのアイディアは総数では150を超えたと記憶しています。全てを述べることはとても出来ませんが、このような社員全員の真摯な取り組みのお陰で活動を開始してから約2年半後には目標の月1万台での損益分岐点達成が出来るようになりました。

藤崎 照夫

Teruo Fujisaki

PROFILE
早稲田大学商学部卒。1972年、本田技研工業(株)入社後、海外新興国事業に長年従事。インドでは、二輪最大手「Hero Honda」社長、四輪車製造販売合弁会社「Honda Siel Cars India」初代社長として現地法人トップを通算10年務める。その後、台湾の四輪製造販売会社「Honda Taiwan」の初代社長、会長を務めた後2006年同社退職。現在はサンアンドサンズ社、ネクスト・マーケット・リサーチ社等の顧問として活躍インド、アジア事情に幅広く精通している。

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