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藤崎 照夫
Teruo Fujisaki
これまで最初の執筆から3年半インドでのビジネス展開を軸にして42回のシリーズを皆様にお届けし、最終回はインドを離れる最後の日の様子で筆を擱かせて頂きましたが、今回から内容を変えてインドに関する基礎知識や生活上の留意点などを話題に選び、お読み頂...
インドでの約10年間の駐在生活では約3,000日間の日記を書き、苦しいことも嬉しいこともさまざまな貴重な経験をさせてもらいました。一般的な日本人から見るとインドはまだまだ異文化の国というのが大多数の方の印象ではないでしょうか。昭和天皇のご崩御の際...
これまで40回を超えるシリーズとしてインドでの私の経験談を中心としてこのコラムを書いてきましたが、そのインドを離れる日がいよいよ近づいて来た訳です。先月号で本社からの台湾への急な赴任命令が届いたことはお伝えしましたが、実は台湾は私にとって個人的には大変縁が深い国でした。先ず終戦直後に私は...
1996年1月5日、丁度私の50歳の誕生日にインドへの2回目の駐在赴任をして6年が経過しました。会社の規定で年に2回は日本での健康診断を受けることになっており、95年の暮れから96年の1月6日まで私は日本へ一時帰国をし、インドへ戻ってからは通常通...
この事故は私の2回目の赴任から約4年半位経過した時に発生しました。このころ先月まで書いてきました国税との問題や会社の赤字対策など極めて多忙な時期でしたが、会社の経営の観点から見ると、それまでの僅かⅠモデルでのビジネスから早く脱却し、如何に早く次期モデルを決めて市場...
今月は、先ず本件の関係者であるインド政府へのアプローチからスタートしたいと思います。本件については、駐インド日本大使も大変気にして頂いていることは以前述べましたが、大使から日本進出企業の許認可権を持つ工業大臣に電話をして頂いたので、工業省のNO.2...
今月はこの問題がどのように展開して行ったかについて話を進めたいと思います。この脱税問題に関しては5つの関係する部門や人達がいました。それは(1)この問題の当局であるICD、(2)我々の事業の認可者でありICDを統括するインド政府、(3)日本大使館、(4)弁護士事務所、そして(5)日本本社です。インドに進出している日本企業も年々増加して来ていますので、それらの企業の方達のご参考になれば...
四輪車の製造販売の新会社は土地の取得の遅延などもあり、会社設立から2年を経過してスタートしました。それから1年を過ぎたある日外出先から会社へ戻ると総務、人事の責任者であるインド人の副社長のところに人が集まって何か協議をしているので、「何かあったのですか?」と聞いてみると、午前中にCUSTOM DUTY INSPECTOR(CDI)の査察官が数名予告なしに来社して来て所謂捜査令状みたいなものを見せて図...
インドへ戻った翌日の早朝ラーマンさん宅へ弔問に出かけました。ラーマンさんの父親で会社の会長であるラルさんが出てきて、私達の顔を見るなり体を震わせて泣き出し、こちらもかける言葉もなくただうつむくのみでした。その後会社へ出社し幹部社員に対して「ラーマンさんの夢を実現するのが残された我々の使命だ。全員力を尽くして頑張って欲しい」と話をしました。夕方にパートナーのファミリー全員が会社...
これまでのコラムでも書いてきましたが、インドの最初の赴任は1年目は赴任直後のストライキに遭いそして大きな赤字でしたが、2年目は幸い当初の計画の12万台生産を年度の最終日に達成することが出来て黒字となり、少額ながら配当も実施することが出来ました。3年目に入り会社の規定に従い、半年に1回の日本での健康診断を受けるために6月初旬に一時帰国することにしました。会社の規定は健康診断と食料...
先月に引き続きこのテーマ―について書き進めます。ラーマンさんとはストライキの解決後累積赤字を抱えた会社をどうしていくか何回も話し合いました。よく言われるジョークに、「国際会議をスムーズに進めるためにはインド人にあまり喋らせないようにし、日本人には喋らせるようにすることだ」というのは読者の皆様はこれまでにも聞かれたことがおありなのではないかと思いますが、ラーマンさんは先ず他の人...
今月号の原稿の依頼を受けてからこれまで私が執筆してきた原稿をもう一度読み返してみましたが、自動車メーカーの社員としてのインドでの2回に亘る10年近い駐在経験を基にプロジェクト発足、工場用地の選定、従業員の採用、研修、日常の経営、労務問題等など30回を超える記事をご提供して来ましたが、これがインドでのビジネス展開をご理解頂く一助になったのであれば幸いです。私はインドでの駐在開始から2...
先月号まで私が実際体験した組合問題(ストライキ)について述べてきましたが今月はそれ以外の他社のケースについて話を敷衍してみたいと思います。<HMSIのケース>HMSIとは、ホンダが設立した二輪車の製造販売の為の100%出資の会社ですが、この会社で2005年7月に労働争議が発生しました。争議の発端は待遇改善などを求めてストライキを首謀したとされる従業員4名を会社側が解雇したことにより発生し、...
外部のオルグが数千名会社に押し寄せてくるという噂が流れてきてから、我々マネージメントは以下の点について対応を図ることにしました。1.詳細な情報の収集:どのような団体がいつ、何名ぐらい工場へ押し寄せて来るのか、色々な方法で情報を収集することが重要ということで、最優先で取り組むことにしました。2.警護体制の強化:既に7~80名の警察官が工場の敷地内に常駐していましたが、人数の増員と警護...
今月は先月に引き続きストライキ発生後の話を進めて行きたいと思います。ストライキが発生した後、当然ながら私は本社にその内容を伝えました。本社からはインドを含む途上国全般を統括する本部長から「駐在員の心身の安全を第一優先に考えること」という指示が送られてきました。これには訳がありました。先月号でお伝えしたように今回のストライキは2回目ですが、1回目のストライキの時に現地人従業員が駐在員の...
読者の皆様新年明けましておめでとうございます。今年も引き続きインドのコラムを担当して参りますのでよろしくお願い申し上げます。2014年に国際協力銀行が実施したアジア主要国の「各国への進出時に直面する課題」という資料がありますが、この中に記載されているインドの主たる課題は以下の通りです。(回答は複数回答方式)(1)インフラが未整備 51.6%(2)法制の運用が未整備 35.1%(3)労務問題 ...
今回も創立記念日のことです。3回にも亘る内容になって恐縮ですが、お付き合い頂ければ幸いです。当日のイベントは会長と私の挨拶で開始しましたが、それが終わったところで従業員の多くの人が希望していた家族の工場見学です。勿論当日は工場は稼働はしていませんでしたが、200名ずつぐらいのグループ毎に説明員がついて従業員と家族が車が生産される工程の順番に沿って工場見学をして行きました。車の部品をくっ...
いよいよ創立記念日を開催することになりました。11月初旬のインドとしては、最も凌ぎやすい季節で当日も晴天で素晴らしい天気でした。10時ぐらいまでに入場となっていましたので、私は準備状況を確認するために1時間ぐらい前に会場である工場に到着し演壇、食事を提供するテント、子供たちの遊具等を見て廻りました。当日の私の服装はコットンパンツにジャンパー姿のラフな服装でした。暫くすると従業員の人達が三...
先月号の最後の部分で、従業員満足度調査の中で多くの社員から「家族に工場見学をさせたい」という要望が出されたと書きましたが、今日はその要望を具体化した創立記念日の式典について話を進めて行きたいと思います。従業員の家族の工場見学だけならお金もかけずに比較的簡単に実施することが出来るので、早速実施したらどうだろうかという意見が関係者からも出されました。然しながら、私はこのコラムでも以前書き...
今月は先月に引続き調査の結果従業員から出された要望事項とそれに対する我々の対応について述べたいと思います。―社員食堂に関する要望―私達の会社は新会社でもあり、従業員とりわけ工場で働く人達は、平均年齢も若く社員食堂に関する関心は高いものがありました。ご承知のように、食事についてはインドでは菜食主義者(ベジタリアン)と呼ばれる人達と肉類も食べるノンベジタリアンの二つのタイプに大別されます。...
先月号では何故この調査を実施しようと思ったのかについて述べましたが、今月はこの調査をどのように展開したのか、また調査の結果と対応策はどのように実行したかなどについて話を進めて行きたいと思います。1)展開方法調査を実施するに当たって先ず幹部社員に対して何故このような調査を実施するのかを説明し、その趣旨を理解してもらった上で各部門の部門長、マネージャーを通して従業員全員に用紙を配布しました。...
このコラムの読者の方の多くは顧客満足度CSIという言葉をご存知ではないかと思います。つまりメーカーが提供する商品の品質、価格、サービス等について顧客がどの程度満足しているかという指標を表すものです。私がかつて仕事をした自動車業界ではこのCSIという言葉は随分前からよく使われていました。このCSIというお客様に対する満足度調査を、自社の従業員からの満足度調査に置き換えたものが、ESI(Em...
インドでは勿論株式市場もあり上場している企業も沢山ありますが、それらの上場企業でも所謂オーナー企業が数多く先進国と比較すると経営の近代化は概して遅れているのではないかと思います。ホンダがインドで四輪市場に参入するに当たって既存の合弁会社のパートナ―と提携することになりましたが、このパトナーは基本的に経営はホンダ側に任せると言ってくれましたので、日本的経営、ホンダの経営思想を基本として新規...
先月号では全社的活動、営業部門、購買部門におけるコストダウン活動について触れましたが、今月はその他の部門での活動について述べたいと思います。④総務部門:総務部門にはこのコストダウン活動の事務局として全社的活動の取りまとめや実績管理などを実施してもらいましたが、部門活動としては毎日従業員の通勤に30台ぐらいのバスをチャーターしていましたので安全及び時間の順守を前提として契約更新の時期に合わせ...
先月号ではコストダウン活動を展開するに至った経由と実行に当たっての考え方を述べましたが、今月は具体的にどんな活動を実施したかについて触れて行きたいと思います。①全社的活動;我々がこのような活動をする際、日本では所謂3Kが先ず最初に取り上げられます。すなわち、交通費、広告費、交際費です。これらの頭文字を取り、私達は3Kと言っていましたが、日本でもバブルがはじけた後多くの飲食店が閉店したり、...
マイソール宮殿(Mysore Palace)。カルナータカ州の州都バンガロールから南西146kmの位置にある。洋の東西を問わず企業経営は決して簡単ではありません。企業が計画する事業計画は政府の出す種々の政策、経済環境、自然環境、競合他社の動向、自分自身の企業体力等々沢山の要因に影響を受けます。私がインドで二度目の駐在をした時に最初に作成した事業計画は、工場の生産能力がフル生産ベースで年間3万台でしたので、...
今回は、実際の企業活動の中で如何に日本的企業文化を取り入れていったかについて、具体例を取り上げながら書き進めたいと思います。①時間の厳守最初に駐在した会社は、本社がデリー市内にあり工場は車で1時間半位のところにありました。この工場で月に1~2回会議がありパートナーと一緒に私も参加しました。この時に貰った会議通知には、ただ単に会議のテーマと何時から開始するかという簡単なものでした。もしパー...
今月は現地法人に於ける日本人駐在員とパートナーを含めた現地人との役割分担について触れたいと思います。私はインドで二つの会社で仕事を経験しました。最初は対等合弁の2輪車の製造販売会社で、2回目はホンダがマジョリティーを持つ4輪車の製造販売会社です。最初の会社ではパートナー会社の会長が新会社の会長となり、社長は会長の長男、私が共同社長という構成で、私の他に5名の日本人駐在員が派遣されており、...
新年明けましておめでとうございます。一昨年の末から始めたこのコラムもお陰様で15回目を迎えることが出来ました。今年も読者の皆様方のインドへの理解の一助になればと頑張って行きたいと思っておりますのでどうぞよろしくお願い致します。先月号で評価制度についてインド人の考え方などについて述べましたが、会社が操業を開始して3年ぐらい経過したところで「評価は業績のみでやっていいんだろうか?」という考えが浮...