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2015.08.03
藤崎 照夫
このコラムの読者の方の多くは顧客満足度CSIという言葉をご存知ではないかと思います。つまりメーカーが提供する商品の品質、価格、サービス等について顧客がどの程度満足しているかという指標を表すものです。
私がかつて仕事をした自動車業界ではこのCSIという言葉は随分前からよく使われていました。
このCSIというお客様に対する満足度調査を、自社の従業員からの満足度調査に置き換えたものが、ESI(Employee’s Satisfaction Index)という言葉でこれは私自身が作った造語です。インドで四輪の製造販売の新会社を立ち上げた時に会社の基本的なあり方というのを幾つかまとめましたが、その中の一つに仕事上のお取引先、地域社会等から存在を愛される会社即ちBeloved Companyを目指したいというのがありました。
これは単に会社の売り上げや利益が大きい等の数字的なものだけを追及するというのではなく、会社で働く従業員が家族、親戚、友人等から「いい会社に勤めているね」と言われるような会社にしたいという想いが原点となっています。それを実行に移した一つの例として、会社を操業していく際に求められる色々な安全基準の一つである工場で使用した水の汚水処理方法があります。
単に汚水を垂れ流さないというだけでなく完全に浄化された水にして工場の外に流すという考えに基づき、限られた予算の中から最新の浄化設備を導入し、その浄化後の水を一部小さな池に放水し金魚を飼育していました。これは見た目にもはっきり分かる安全基準の遵守です。また我々は交通手段の一つである自動車を製造していましたが交通事故で亡くなる方は少なくありませんでした。それで交通事故の遺児に対する奨学金の供与や貸与も実施しました。
このような会社の考えや経営方針だけでなく、会社での日常活動に対して、従業員がどのように考えているかを調査して、経営活動に反映したいというのがこのESIの発端でした。会社の活動が軌道に乗り始めた3年目ぐらいにインド人のトップである副社長に私の考えを伝えて調査内容の検討をお願いしました。
暫くして素案が提示されましたが、その主たる内容は、
①会社の経営方針について
②組織における上司、同僚、部下との関係
③仕事上困っている問題
④通勤バス、社員食堂などに関する要望
⑤その他提案事項
等でした。
例えば、①に関しては、会社の経営方針は理解出来るか、また上司は定期的に会社の活動に関する情報を提供してくれているかなど更に細かく分かれていました。アンケート用紙はヒンディー語で無記名で記入するようになっていました。次回はこの調査結果とそれに対する我々の対応策について述べたいと思います。
藤崎 照夫
Teruo Fujisaki