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COLUMN コラム

悠久の国インドへの挑戦

2015.11.24

「悠久の国インドへの挑戦」26 創立記念日 そのII

藤崎 照夫

ケララ(インド南西部)の水郷を運行する屋形船

いよいよ創立記念日を開催することになりました。11月初旬のインドとしては、最も凌ぎやすい季節で当日も晴天で素晴らしい天気でした。10時ぐらいまでに入場となっていましたので、私は準備状況を確認するために1時間ぐらい前に会場である工場に到着し演壇、食事を提供するテント、子供たちの遊具等を見て廻りました。当日の私の服装はコットンパンツにジャンパー姿のラフな服装でした。

暫くすると従業員の人達が三々五々会場に到着して来ましたが、私が驚いたのは工場のラインで仕事をする人達が通常はジーパンにT-シャツ姿で通勤してくるのに、この日は結婚式に出席するような服装;背広にネクタイ、奥さんや子供さんも綺麗に着飾って来ている姿を見たからです。私は事務局の人に「正装で参加するように指示したの?」と思わず聞きましたが答えは「いいえ、服装については全く指示はしていません」というものでした。

更に事務局の人は、「今日の創立記念日に家族と一緒に会社に来るというのは、社員にとって特別な日なのではないでしょうか」と説明してくれました。私は「なるほど、みんなこの日を楽しみに待っていたんだな」と得心した次第でした。10時頃になるとほぼ皆が揃ったようなので、先ずパートナーであるインド人の会長そして私の挨拶となりましたが、私のスピーチについて少し触れさせて頂きたいと思います。

私も社長としてこの新会社に赴任後色々な場面で色々な方を前にご挨拶をする機会がありましたが、通常は「ナマステー」というヒンディー語の挨拶の言葉を言った後は英語でのスピーチをするのが常でした。然しながら今回は、初めて全従業員とその家族に対してスピーチをするのだから通訳を通してではなく、ヒンディー語で直接話をしてみたいと考えました。

それで先ず、日本語で原稿を書き日本語の分かる秘書にこれをヒンディー語に訳した後ローマ字スペルで書いてもらいそれを原稿として発音の仕方、どこで切るのか、アクセントはどうするのかなど、皆には内緒で7~8回特訓を受けました。この秘書は厳しい先生で何度もNGを出されました。 その内容は、「皆さん今日はよく来て下さいました。いつも皆さんの子供さんやお父さん達に一生懸命仕事をしてもらっていることに感謝しています。今日は初めての創立記念日式典ですが、工場見学、お遊び、食事など一日充分に楽しんで下さい」といった趣旨でした。

 

私のスピーチはいつものように「ナマステー」で始まりましたが、その後ヒンディー語が続いたので聞いている人は皆びっくりした顔をしていました。
10分間位のスピーチでしたが、数日して数名の人に、「スピーチの内容は理解出来ましたか」と聞いたところ、ある幹部は「藤崎さん、発音は中学生位のレベルだが内容は分かりました」と答えてくれました。次回もこの日の模様を続けたいと思います。

藤崎 照夫

Teruo Fujisaki

PROFILE
早稲田大学商学部卒。1972年、本田技研工業(株)入社後、海外新興国事業に長年従事。インドでは、二輪最大手「Hero Honda」社長、四輪車製造販売合弁会社「Honda Siel Cars India」初代社長として現地法人トップを通算10年務める。その後、台湾の四輪製造販売会社「Honda Taiwan」の初代社長、会長を務めた後2006年同社退職。現在はサンアンドサンズ社、ネクスト・マーケット・リサーチ社等の顧問として活躍インド、アジア事情に幅広く精通している。

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