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2015.06.29
原島 一男
パトリシア・ハイスミス原作「見知らぬ乗客」。列車の中で、プロテニスのスター・プレーヤーのガイ・ヘインズ(ファーリー・グレンジャー)は、見知らぬ乗客のブルーノ・アントニー(ロバート・ウォーカー)から話しかけられます。ガイは、’交換殺人’というこの突拍子もない話に驚き果てます。ブルーノは、新聞などの情報で、ガイが遊び好きの妻ミリアムに愛想をつかしてことをよく知っていました。それで、ブルーノは、自分がガイの妻を殺す代わりに、ガイが自分の父親を殺すという’交換殺人’の計画を持ちかけたのです。
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BRUNO: It’s so simple. Two fellows meet 「とても簡単です。今のあなたと僕のように
accidentally, like you and me. 二人が偶然出会う。
No connection between them at all, 二人には何の関係もない。
they never saw each other before. お互いに会ったこともない。
Each one has somebody that he’d like でも、それぞれに消したい人がいる。
to get rid of. So, they swap murders. それで交換殺人をするのです」
GUY: Swap murders? 「交換殺人を?」
BRUNO: Each fellow does the other fellow’s 「おたがいに別の相手の殺人をする。
murder. Then, there’s nothing to connect それでも、二人には何も関係がない。
them. Each one has murdered a total それぞれが完全に見知らぬ人を殺す、
stranger-- like you do my murder, あなたは私の殺人を行い、
I do yours. 私はあなたの殺人をする」
-「見知らぬ乗客」(Strangers on a Train 1951 監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:レイモンド・チャンドラー/ツェンジ・オーマンデ
原作:パトリシア・ハイスミス)
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・each one has murdered a total stranger =「それぞれが完全に見知らぬ人を殺す」
・like you do my murder, I do yours. = 「あなたが殺人をするように、私はあなたの殺人をする」
そのあと、ブルーノは勝手にその計画を実行に移し、ガイの妻ミリアムを遊園地へ誘い出し、殺してしまいます。そして、今度は君が殺人をする番だ、とガイを脅迫します。さて、追い込まれたガイは自分の身を守るために、ある決断をするのです。
サスベンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック。イギリス生まれの彼は、ハリウッドへ来るまでの20年間に23本、その後1980年に亡くなるまでに30本の合わせて53本の長編映画を作りました。
ヒッチコック映画は、日常生活で誰もが経験し得る間違いや偶然が、いかに主人公自身や恋人や家族の人生を狂わせるかを見せ、世の不思議さや奇怪さを見直すものが多く、筋の運びやカメラ手法が独特であるばかりか、使われている会話も極めて洗練されています。
原島一男著「心をなごませる感じのよい英会話」(ベレ出版)7月15日発売へ
原島 一男
Kazuo Harashima