文字サイズ
2016.01.18
原島 一男
映画の中で話されている、上品で丁寧なフレーズをそのまま紹介する連載。
ローマのスペイン広場のそばの古い住宅。そこに住むイギリス人の作曲家キンスキー(デヴィッド・シューリス)のところへ住み込みで働きに来たアフリカの女子学生シャンドライ(サンディ・ニュートン)。二人を中心に展開する物語の中で、キンスキーの言葉。
----------------------------------------------------------------------------
KINSKY: One of the finest pianists of our day, Vladimir Horowitz,
「現代で最高のピアニストの一人、ウラディミール・ホロヴィッツ、
he stopped playing at the peak of his career. 彼はキャリアの頂点でピアノを辞めた。
He became convinced that his fingers were made of glass.
自分の指はガラスで出来ていると信じるようになり、
Each time he struck a key, ピアノの鍵盤を打つたびに、
he was terrified the fingers 指が粉々に
might just shatter. 砕け散るのではないかと恐れた」
-「シャンドライの恋」(Besieged 1998 監督:ベルナルド・ベルトリッチ 脚本:クレア・ペプロー/ベルナルド・ベルトリッチ)
----------------------------------------------------------------------------
これは、映画のセリフです。真実かどうかは解りません。
・Horowitz became convinced that his fingers were made of glass.
=「ホロヴィッツは自分の指がガラスで出来ていると信じるようになった」
・My mother became convinced she was ill.(母は病気になったと信じていました)
・She became convinced that she was eating too much.(彼女は食べ過ぎだと信じるようになった)
ホロヴィッツは、1983年に初来日しましたが、期待された演奏は「ひびの入った骨董品(こっとうひん)」と評論家の吉田秀和さんにいわれるほどのものでした。反省したホロヴィッツは、アルコールと睡眠薬を絶って3年後に再来日。そして、洗練された見事な演奏を成し遂げ、吉田さんは、その演奏に最大級の讃辞を与えています。
ところで、ホロヴィッツは、写真嫌いで有名です。カメラマン織作峰子さんは、ホテル・オークラに宿泊していることを突き止め、花束も持って訪ねました。10FのエレベーターホールでSPが警備していたので「写真を撮らせてくれないか?」と頼み込みます。そのうちに、ホロヴィッツが出てくるかもという期待があったので、無駄とは思いつつ待っていると、30分くらいして、ホロヴィッツが散歩に出てきました。 そこで「SPに追い掛けられながら、とにかく、3~4枚夢中で撮りました」。この写真は週刊誌を飾ったそうです。
原島一男著 「心をなごませる感じ感じのよい英会話」 (ベレ出版) 好評発売中
原島一男著 「映画のなかのちょっといい英語」 (麗澤大学出版) 好評発売中
原島 一男
Kazuo Harashima