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2016.05.09
原島 一男
映画の中で話されている、上品で丁寧なフレーズをそのまま紹介する連載。
第一次大戦中のロンドン。ウオータールー・ブリッジでイギリス軍大佐ロイ・クローニン(ロバート・テイラー)はバレリーナのマイラ(ヴィヴィアン・リー)と知り合い、激しい恋に落ちます。これはロイがマイラへ贈る求婚の言葉。
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ROY: Now, listen, darling. 「 いいかい、聞くんだよ。
None of your quibbling! 言い逃れはなし!
None of your questioning! 質問なし!
None of your doubts! 疑いなし!
This is positive, you see? これはポジティブだ。
This is affirmative, you see? 賛成だ。
This is final, you see? これで最後だ。
You're going to marry me, you see? わかるか、きみは、ぼくと結婚する」
-「哀愁」(Waterloo Bridge 1940 監督:マヴィン・ルロイ 脚本:ロバート・エイメット・シャーウッド)
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何という力強い愛の言葉でしょう!
“none of ~”“this is ~” ”you see?”の3つを組み合わせたプロポーズの言葉です。
・none of your ~ = 「あなたの~はない」という強い否定の表現
・this is positive. =「これは yes です」
・this is final. =「これが最後です」/「これ以上は何もない」
マイラは、この求愛に、こう応えています。
MYRA: I love you. I’ve loved anyone else. I never shall.
「愛しています。これまで、誰も愛したことはありません。これからも誰も愛しません」
原題の Waterloo Bridge は、ロンドンのテムズ川にかかる橋の名前。現在の橋は2代目で、1代目の Waterloo Bridge は1817年に開通、1815年にナポレオン1世が率いるワーテルローの戦い (The Battle of Waterloo) にイギリス軍が勝ったことで、この名前になりました。その後、1945年に現在の2代目の橋が開通しましたが、第二次世界大戦中にドイツ軍から爆撃され、戦争中のことで男性の手がたりず、女の人の手で作られたということから、女性の橋 (WOMEN'S BRIDGE) ともいわれます。
この名前を持つ映画のほうも、1931年にも「旅路の終り」が作られ、「哀愁」はそのリメイク、いずれも戦争による悲劇を映し出しており、映画史上の残るメロドラマの名作。なお、「哀愁」は「風と共に去りぬ」(Gone with the Wind 1939)と「欲望という名の電車」(A Streetcar Named Desire 1951)とともにヴィヴィアン・リーの代表作です。
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原島 一男
Kazuo Harashima