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2017.03.13
原島 一男
映画の中で話されている、上品で丁寧なフレーズをそのまま紹介する連載。
大学を卒業したばかりで親友同士のクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)とヴィッキー(レベッカ・ホール)は、バルセロナを訪れたがゆえに思わぬ恋を経験します。その相手は芸術家フアン・アントニオ(ハビエル・バルデム)。
ファンの情緒不安定で情熱的な先妻マリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)も一緒に、4人でピクニックに出掛けたときの会話を聞きましょう。
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CRISTINA: What’s wrong? What, what, what? 「どうしたの?どうしたの?
What happened? Wait, sit down. どうしたの?
Sit, sit, sit, sit. Is it your upper 待って,座って、座って,座って,
or your lower? 上のほう,下のほう」
JUAN ANTONIO: Here. 「ここだ」
CRISTINA: Here? Hold on. I have aspirin 「ここ?待って。バックに
in my bag. Okay. You relax. アスピリンがあるわ。さあ、落ち着いて。
I’ll be right back. すぐ取ってくるから」
MARIA: It’s all in his head. He has so much 「それは、彼の頭のせい。テンションが
tension. To the world, he’s carefree, あり過ぎるの。 世間に対しては、
nothing matters, life is short, 彼って屈託なく、何も気にしないと言って
with no purpose. But all his fear 生きている。人生は短く何の目的もないと。
just goes to his head. でも、頭の中は恐怖でいっぱいなの」
-「それでも恋するバルセロナ」(Vicky Cristina Barcelona 2008 脚本・監督:ウディ・アレン)
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ファンは、はたからは、屈託なくのんびりと生きているように見えても、実際にはビクビクしている、と本人をよく知るマリアが話しています。
・What’s wrong? /What happened? =「どうしたの?」と相手の様子を気づかう表現
・Is it your upper or your lower? =「上のほう,下のほう」と痛いところを聞いている
・to the world = 世間に対しては
・All his fear just goes to his head.
=「恐怖の全ては頭へ行っている」→ 「頭の中は恐怖でいっぱい」
バルセロナに住むフアン・アントニオは、人生には何の意味もないと言っているのですが、それは表面だけの話。
本当は人生が気になってしかたがない。
一方、恋に対する考え方がまったく違うクリスティーナとヴィッキーの二人。
それに、前妻のマリア。3人の女性に対するフアンの言動が見ものです。
ウディ・アレン監督の言葉:「この映画には、監督である自分すらも気づかなかった愛が描かれている。
ぼくは愛について何か深いことが言いたいわけではない。でも、登場人物を生み出し、彼らが関係を持つと、何らかの考えが浮かび上がってくる。
映画が完成すると、当初描きたいと思っていたことと違っていたり、矛盾する要素もあった。ただ一方で、一貫してどうしても伝えたいメッセージがあった。
人生にはたまたま事がうまく運ぶこともある。でも、それは事前にはわからない。だから、愛に関しては、人はともかく柔軟でなければならない」
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原島 一男
Kazuo Harajima