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COLUMN コラム

駐在員のための中国ビジネス ー光と影ー

2015.04.20

駐在員のための「中国ビジネス―光と影」(第20回)駐在員心得(その6)

菅野 真一郎

(1)現地法人の運営

2008年北京五輪の運動場

前回は中国人職員とのコミュニケーションのポイントについて述べました。

①中国語を習得する―について一点追加させていただきます。

それは、中国語の勉強は我流ではなく、始めは発音と声調について専門家(語学学校、家庭教師など)に付いて、相当程度徹底して勉強して頂きたいということです。この点をしっかりやっていれば、上達してくるととても聞きやすい流暢な中国語になると思います。発音と声調がしっかりしていると、中国人から尊敬されるほどです。

さらに外国語はやはり慣れですから、毎日少しでも自分で声を出して話す癖をつけてください。自習が基本になりますが、初期のころから習慣にしていただきたいのは、周囲の中国人との会話です。そして覚えた単語(生詞―シャンツウ―と言います)をできるだけ何回も使ってみることです。中国人に通じるととても楽しくなります。駐在して一か月ぐらいは運転手を相手に車に乗ったら「ニーハオ」、降りるときは「シェーシェ、シンクーラ、ザイジエン」(こんにちは、ありがとう、ご苦労さん、さようなら)の繰り返しです。運転手が喜んで話しかけてきたら「ドイブチー、ウオ ティンブドン、ウオ ガンガン カイシー シュエシー ジョンウェン」(すみません、聞いてもわかりません、私は中国語の学習を始めたばかりです)と言えば、「この日本人は一生懸命中国語を憶えようとしている」と好意を持ってくれます。挨拶の相手はお掃除のおばさん、守衛のおじさん、行きつけの食堂の店員、周囲の人なら誰でもいいです。中国語に限らず、外国語はその国に住むと、そして覚える気があれば覚えが早いと言われるゆえんです。

3)駐在員の最大ミッションは販売シェア拡大、本社収益への貢献

社会主義、官僚体制中国のビジネス環境は、他の市場経済、自由主義国家のそれと比較して相当厳しいものがあります。ついつい本社との遣り取りでは、思うように業績が伸ばせなかったりすると、「中国とは…」とか「中国では…」といった言い訳が口をついて出がちになります。その気持ちは良く分ります。

しかし今や中国は世界第2位のGDP大国、世界第1位の貿易大国、世界第1位の外貨準備大国であり、1978年12月の改革開放政策がスタートして35年間、平均GDP成長率は9%を越え、大きなマーケットとしてその存在感は高まる一方です。ここ2~3年は、成長率も7%台に低下してきているとはいえ、経済規模のベースが大きくなり(GDP規模は日本の2倍以上)、市場規模の数値が色々な製品分野で巨大(ほとんどが世界トップクラス)になってきています。
大手自動車メーカーや家電メーカー、機械メーカーの全世界販売の10%が中国で、しかも年間増加分の数十パーセントを中国市場で稼ぐといった例は相当出現しています。

従って中国でのビジネスの勝敗は、自社の業績にも大きな影響を与える程になりつつあると言っても過言ではありません。

中国自身も2001年12月WTOに加盟し、市場開放の約束は着実に履行しております。習近平政権は、経済成長率が低下した下でも持続的安定成長(当面GDP成長率+7%前後)を確保するため、産業構造転換や規制改革・緩和を推進しています。外資の制限業種の半減、人民元の国際化(金利の原則自由化や資本取引での交換性回復)など、外資にとって投資環境の改善も引き続き期待できると思います。

2014年11月の18期4中全会では、前政権が実現半ばに終わった人治国家から法治国家への転換(“依法治国”)を謳いあげ、相応の改善努力をしていることは間違いありません。
いろいろ発展途上ゆえの問題はあっても、産業・経済・金融政策はじめ各方面に亘って毎年改革・改善され向上していることは誰もが認めるところです。

「中国とは」とか「中国では」の言い訳はもはや無用です。むしろ中国に配属されたことを誇りに思い、エキサイティングな中国で働く事を自分の成長の糧にしようとする前向きな考え方をすべきではないかと思います。

さらに中国では、自分の努力が結果に結びつき易いということです。気配り、創意工夫した事が必ずビジネスの成果に繋がる可能性が高いのが世界最大の発展途上国・中国です。
戦後あるいは高度成長時代の日本と似ていると思いませんか。
逆に遊ぶ気になれば、いくらでも遊べるのも中国です。

官僚主義中国では、行政官も民間人も点数を稼ぐ事が重要になります。相手の中国人が点数を稼げる様な工夫をすれば、親密な関係が築け、以後何か頼み事をしても相当の手助けをしてくれることになります。10年、15年、20年付き合ってきた人物が、地方政府や中央官庁の高官に就任して、仕事の上の太い人脈になるケースは、中国ビジネス20年、30年の商社のチャイナスクールの人からよく聞かされる話です。中国ビジネス経験30年の私も後半の10年ではそういうケースがいくつか出てきて、自分でも驚く事しきりでした。

(つづく)

菅野 真一郎

Shinichiro Kanno

PROFILE
1966年日本興業銀行入行、1984年同行上海駐在員事務所首席駐在員、日中投資促進機構設立に携わり同機構初代事務局次長、日本興業銀行初代上海支店長、同行取締役中国委員会委員長、日中投資促進機構理事事務局長を経て、2002年―2012年みずほコーポレート銀行顧問(中国担当)、2012年4月より東京国際大学客員教授(「現代中国ビジネス事情」)。現在まで30年間、主として日本企業の中国進出サポート、中国ビジネスに係るトラブル処理サポートの仕事に携わってきた。

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