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COLUMN コラム

日本人ビジネスマンの見たアメリカ

2017.02.27

「日本人ビジネスマンの見たアメリカ」34
『What is会議?』

北原 敬之

サンディエゴの夜景

最近、日本では、政府が長時間労働など日本的労働慣行を是正する「働き方改革」を推進していますが、筆者は、日本企業が長時間労働になりやすい原因の1つに、日本の「会議」のあり方があると考えています。「○○会議」「○○委員会」「○○検討会」など名称は様々ですが、企業に限らず官庁でも学校でも、あらゆる組織で多くの「会議」が行われます。日本の組織は「会議」が多く、管理職になると一日中「会議」ばかりということもあります。筆者は、日本でもアメリカでもいろいろなタイプの会議に出席した経験がありますが、日本とアメリカでは、「会議」についての考え方も進め方もかなり違いがあるように感じます。今回のコラムでは、日本とアメリカの比較を通じて、「会議」について考えてみましょう。

筆者自身の経験と友人のアメリカ人ビジネスマン達の意見に基づいて、日本企業とアメリカ企業の「会議」を比較してみると、日米間で下記のような違いがあると考えられます。

①日本企業は会議が多い。
日本企業では「○○委員会」とか「○○会議」という名称の会議体が年々増えていきます。日本企業のマネジメントは「情報共有」と「コンセンサス」をベースとしているので、会議が多くなるのは当然だとは思いますが、それにしても会議が多過ぎます。コンセンサスを得るための「○○委員会で議論しました」という実績づくりや、コンプライアンス上の問題が発生した時の社外向けのアリバイ(言い訳)として設置した○○委員会など、会議体は増える一方です。一旦設置した会議体を廃止することは少ないので、減ることはあまりありません。「会議で何を議論するか」よりも、「会議を開くこと」や「会議体を設置すること」自体が目的になってしまっているようなケースも見受けられます。

②日本企業の会議はミッションが明確でない。
アメリカ企業の会議は、「意思決定」「ディスカッション」「情報共有」などのミッションが明確で、参加するメンバーもその会議で何をすべきか理解して準備してくるので、会議の進行が非常にスムーズで、アウトプットも出しやすいのですが、日本企業では、ミッションが曖昧なまま会議が開催されることもあり、メンバー間の意識や情報量に差が生じるため、スピーディーな会議進行ができず、結局「アウトプットなき会議」に終わってしまうこともあります。

③日本企業の会議は時間が長い。
アメリカ企業に比べると、日本企業の会議は時間が長いと言われます。前述の「会議のミッションが明確でない」ことが理由ですが、他にもあります。
まず第一に、会議資料を事前に配布せず、当日すべて説明しようとするので、資料説明に時間がかかることがあります。長時間の説明で参加者は疲れてしまい、肝心の議論に十分時間が使えないこともあります。いわゆる「ダラダラ会議」ですね。「ダラダラ会議」になると、メンバーの中には、会議室にパソコンを持ち込んで内職(会議と関係ない仕事)をしたり、居眠りをする人も出てきます。
第二に、会議に参加するメンバーが多いことです。アメリカ企業では、1つの部門で1名(通常はマネージャー)の参加者が普通ですが、日本企業では、部下をぞろぞろ連れてくる管理職が多いので、会議の参加者がどうしても多くなります。なぜ会議に部下を連れてくるのか、良く考えれば、部下育成のためだと言えますが、悪く考えれば、管理職が自分ひとりでは不安なため、助っ人として部下を連れてくるとも言えます。いずれにしても、人数が増えれば増えるほど、会議の時間は長くなります。
第三は、会議のファシリテーションです。アメリカ企業では、会議の進行役には、ファシリテーションの能力を持った人物が当たり、時間配分や議事進行をうまくコントロールして予定時間内で期待されたアウトプットを出すように会議全体をマネージしますが、日本企業では、単なる司会者で、時間配分も議事進行も成り行きまかせになるため、会議時間が長くなり、場合によっては時間切れで次回会議に先送りになったりします。日本企業の社員に対するファシリテーションの教育が不十分なことも一因でしょう。

④日本企業では会議で発言しない。
アメリカ企業の会議では参加メンバーは積極的に発言します。会議は議論する場ですから当然なのですが、日本企業では会議で発言しない人が多いのです。発言しないから何も意見がないかと言うと、そうでもなくて、会議が終わった後に廊下やトイレで自分の意見を言っている人をよく見かけます。つまり、会議はセレモニーだから黙って座っているだけ、会議以外の場所で「本音で議論する」ということです。公の場所での意見対立を避けようとする日本的ビジネス文化であることは理解できますが、こういった姿勢が日本企業の会議の効率性を低下させているのも事実です。

「日本企業はブルーカラーの生産性は高いが、ホワイトカラーの生産性は低い」とよく言われますが、もしそうだとすると、日本企業の「会議」のあり方にその原因があるのかもしれません。日本企業がグローバル化を進める過程では、日本企業独特の「会議」のあり方にもメスを入れる必要があると思います。

北原 敬之

Hiroshi Kitahara

PROFILE
京都産業大学経営学部教授。1978年早稲田大学商学部卒業、株式会社デンソー入社、デンソー・インターナショナル・アメリカ副社長、デンソー経営企画部担当部長、関東学院大学経済学部客員教授等を経て現職。主な論文に「日系自動車部品サプライヤーの競争力を再考する」「無意識を意識する~日本企業の海外拠点マネジメントにおける思考と行動」等。日本企業のグローバル化、自動車部品産業、異文化マネジメント等に関する講演多数。国際ビジネス研究学会、組織学会、多国籍企業学会、異文化経営学会、産業学会、経営行動科学学会、ビジネスモデル学会会員。

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