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2015.02.16
矢野 暁
シンガポールは「あれもこれもダメー」と、禁止事項の多い国であると国内外の人々に思われています。違反行為に対しては罰金・懲役・鞭打ちなどの罰則があるので、同国のニックネームの一つがFine Countryというのはあまりに有名ですね。
代表的な(?)禁止事項は、チューインガムの国内への持ち込みや国内販売。最近は薬局でガムを目にしますが、これらは米国とのFTA締結で合意した歯科治療・薬用のもので、限定的緩和にすぎません。喫煙、公共交通機関での飲食、ゴミのポイ捨て、その他様々な「迷惑行為」(例えば公共の場でのデモ、花火、唾吐きなど)に関して、事細かに規制されています。
具体的内容は様々なウェブサイトにも書かれていますので、赴任者・出張者で漠然としか認識されていない方は、一度確認されることをお勧めします。麻薬に対して厳しいのは勿論ですが、軽犯罪に対しても「見せしめ」的に処罰されることは本当にありますので、気を付けて下さい。
これに関連して、今一番ホットな規制対象が「飲酒」です。夜10時半から朝7時まで、公共の場での飲酒と酒類販売を禁止する法案Liquor Control (Supply and Consumption) Billが、さる1月30日に国会で可決されました。以下、その概要です。
①「公共の場」とは、一般市民がアクセス可能ないかなる屋内外の場所。例えば公園や歩道など。例外なく、国内全域において適用。
②BBQパーティーやイベントを公園やHDB(公団住宅)で行う場合、事前許可なしでの10時半以降の飲酒はダメ。
③営業許可のあるレストランやバーなどでは10時半以降も飲酒可能。もちろん家ではOK。
④全土において10時半以降は種類の販売を禁止。どのお店に行っても酒類購入はできない。
⑤罰則は初犯が千ドル以下の罰金、重犯は2千ドル以下の罰金または3か月以下の懲役またはその両方。
⑥リトルインディアとゲイランの2地区は「酒類管理地帯(Liquor Control Zone)に指定し、更に厳しい規制を課す。
全島に4頭いるマーライオンが目を光らせて、厳しく取り締まるようです。大多数の市民はこの法案に賛成していたようですが、「また規制かー」と溜息交じりの反応も出ています。増える犯罪や迷惑行為に対する予防措置の必要性に対しては、小売や酒類メーカーの業界も一定の理解を示していますが、この規制はやり過ぎでは?との声も上がっています。果たしてこの規制の内容が厳しすぎるものなのか、他国と比べてどうなのか、色々と議論のあるところです。
私はこの飲酒規制を含むシンガポールの諸規制に対して、全般的にはネガティブな立場ではありません。次回のコラムでは、「秩序」の視点から規制についても考察したいと思います。
矢野 暁(サムヤノ)
Satoru Yano