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矢野 暁(サムヤノ)
Satoru Yano
<兵役への理解・意識を高める> ご存じの通り、シンガポールには兵役の義務「National Service (NS)」があります。詳細を端折(はしょ)って簡単に言いますと、シンガポール人ならびに永住者(PR)の男性は18歳になると全員徴兵され、2年間の訓練を受けます(軍だけではなく警察や消防なども対象となります)。その...
<引き続き騒がしい?>「未年から申年へ」(第14回、2016年2月)を書いてから早一年近くが経ち、振り返ってみると、一年前に書いたことは結構当たっていたかなあと自画自賛しつつ、現実の申年(さるどし)は予想を遥かに上回っていたとも痛感しています。特に英国のブレグジッド(EU離脱問...
2008年9月のリーマンショックからの回復を始めた2009~10年頃から、特に日本・欧米の企業と人のシンガポールへの流入が勢いづいていたと思います。統計的な数値は別として、最近、全般的にはその勢いに陰りが出ているように感じています。そう感じている身近な状況...
<芸術の秋>とは言っても、シンガポールにいると「あ~、芸術の秋だなあ」などという気分にはなりませんよね。あまり季節感のない東南アジアはどこも同様で、辛うじてハノイなどベトナム北部が東アジア的な季節の変化を共有しているにすぎません。シンガポールでは建国後の長期にわたり、芸術的なものはどちらかというと...
シンガポールは大丈夫か?最近、シンガポールを訪れる日本企業幹部の方々からよく受ける質問です。従業員の安全確保の観点からも、またアジア事業戦略拠点という位置づけからも、企業幹部にとり当然の質問なのでしょうが、ちょっと前までは誰もそんな疑念を抱くことはなかったように思います。ISIS等のイスラム過激派に起因するものの他に、国内・域内に抱える根深い対立関係を反映し...
いったい彼は何者だ!? 少なくとも在星外国人でこの人物を知っていた人は殆どいなかったでしょう。しかし8月12日、リオ・オリンピックの100メートル・バタフライ決勝で好調マイケル・フェルプスらを大差で破って堂々優勝したジョセフ・スクーリングの名前は、同日から翌13日にかけて、シンガポール島内中に瞬く間に知れ渡りました。同国にとり五輪史上初の金メダルにシンガポール...
<シンガポールの都市開発を手っ取り早く学べる場所>企業や学校の研修でシンガポールを訪れる方々をよくお連れする場所があります。目的は、極めて限られた開発資源しか持たないシンガポールという国がどのような都市開発を進めてきたか、これからどのような開発を進めて行こうとしているのか、そこに秘められた工夫と計画・実行力を知ることにより、「制約下での開発・サバイバルの...
<「行こう!」シリーズ第一弾>今回から続けて(または時々)、「行こう!」企画の下で、皆様に是非とも一度は訪ねてほしいシンガポールの場所を紹介します。もちろん単なる観光や娯楽を目的とするというのではなく、本コラムに即した「国際人材の稽古場」として相応しいと私が考える場所です。良く知られている場所だけど行ったことがない、或いは地味であまり一般には知られていな...
今回のコラムは、本邦経済団体が発行する月刊誌に昨年私が連載したコラムを基に執筆します。<致命的欠乏症>シンガポールを拠点に長年アジアの現場で研修やコンサルティングを通じて日本企業の皆さんのお手伝いをする中で、海外事業展開において最も不足している経営資源は、ずばり、国際的な「人材」であるということを痛感しています。世界市場に打って出るべき今この時に、それ...
<シンガポールのM&A倍増>シンガポールにおけるインアウト及びアウトインのM&A取引総額は、ここ数年増加傾向が顕著であり、2015年には前年の約5百億米ドルから一気に約1千億米ドルへと倍増、件数ベースでも7割増加しました(筆者作成のグラフ参照:出所はコーポレートファイナンス・アドバイザリーファームDuff & Phelps)。6百件近いディールのうち7割がクロスボー...
<アジアの新年はこれから>2016年2月8日、アジアの多くの国で旧暦の正月を迎えました。華人の多いシンガポールでも、8日と9日は祝日でした。中国語では「新年快楽(シンニェン・クアイラー)」とか「恭喜発財(ゴンシー・ファッツアイ)」などと言い合いながら、華人以外の人達も一緒に祝福します。私は16年住んでいるシンガポールの前には7年間ベトナムに住んでいたのと、家内が...
既に皆さんもご存じのとおり、去る10月5日に「環太平洋経済連携協定(TPP)」の交渉が基本合意に達しました。元はと言えば、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国が、多国間FTA「Pacific 4 (P4)」を2006年5月に発効させ、これを拡大する形でTPP交渉が展開されていきました。つまり、シンガポールはTPPの元祖加盟国なわけです。世界の自由貿易を推進するシン...
<タイがシンガポールに対抗>今年4月末にタイの暫定政権が導入した国際地域統括本部(IHQ)の新優遇制度は、かなり画期的でした。政府が同制度の詳細を6月末に公表してからは、在星日系企業の方々との会話の中でも話題となっていますし、既に相当数の在泰外資企業が申請を出しているようです。東南アジアにおける地域統括と言えば、今までシンガポールが圧倒的な優位性を維持してき...
<とんだ災難>建国50周年記念式典を8月半ばに無事終え、その後の9月11日の総選挙も与党勝利で比較的順調にきたシンガポールですが、何とかF1のナイトレースを滞りなく完了した9月後半前後から10月下旬にかけて、島内全体のストレスレベルが高まっています。隣国インドネシアでの違法な野焼きや森林・泥炭火災により、8月下旬頃からシンガポールは深刻なヘイズ(haze:煙害)...
<与党PAPが得票率で大幅挽回>去る9月11日、シンガポール国会(一院制)の議員総選挙の投票が実施されました。前回2011年5月の総選挙で与党の人民行動党(PAP)は、建国以来の屈辱的な低得票率という形で一般国民からの「不満」を突き付けられたので、今回の選挙はその流れを引き継いでPAPへの不支持が勢いを増すか、はたまたPAPが巻き返しを実現できるか、国内外が注目していまし...
<38社が監視リストに>先回コラムの掲載後まもなく、「シンガポール人材省が38社を監視対象にする」とのニュースが当地メディアに流れました。昨年8月にJobsBankサイトが導入されて1年が経過し、その間に同サイト利用も含めてシンガポール人雇用における公平性がどの程度確保されたのか、その実施状況について人材省がレビューした結果として38社が「公平性に著しく欠ける」と判断...
<外国人へのハードルをどんどん上げる>私がベトナムからシンガポールに移住してきた2001年当時は、外国人が就労許可を取得するのはさほど難しくありませんでした。それまで住んでいたベトナムのみならず、自分の業務範囲である東南アジアのタイ、マレーシア、インドネシア等々の国はこれが結構厄介だったので、「シンガポールはなんて開かれた国なんだろう」と感心していたものです...
<東南アジアで人気のイベント>去る6月16日、東南アジア域内のイベントSEA GAMES(シーゲームズ)が、約10日間の日程を無事に終えました。ご存じない方は「SEA GAMESって何?」と訝ることでしょう。 単純に字面から連想されるのは「海上ゲーム」、すなわちマリンスポーツの大会です。政治・外交好きの人なら、GAMESには駆け引きや演習という意味があるので、昨今...
<11日だけ>シンガポールで仕事をしている皆さんの中には、「この国は祝祭日が少ない気がするなあ」と感じられている方々も多いのではないでしょうか?この原稿を6月1日のヴェサック・デー(Vesak Day)の祝日を利用して書くこともあり、今日はシンガポールの祝祭日(以下、「祝日」)について触れたいと思います。シンガポールの祝日数は、世界的に見ても確かに相当少ない方なの...
<価値の発見>近代シンガポールの幕を開けたのは、1819年にシンガプーラに上陸した英国人スタンフォード・ラッフルズです。150人足らずの住民しかいなかったと言われる漁村シンガポールの戦略的有用性をラッフルズ卿が見出すことがなければ、今のような近代国家にはなっていなかったことでしょう。「無に見えるものの中に大きな価値を見出す」という能力は、私たちビジネスパー...
3月の終わりの1週間、虚空を見つめるマーライオンの目がいつもと違い、とても淋しげで、潤んでいるように見えました。またその表情は、昇天する主(あるじ)に別れを告げるかのように、悲しげに遠吠えしているようでもありました。皆さん既にご存じのように、シンガポール建国の父リー・クアンユー元首相が3月23日未明に享年91歳で死去、1週間にわたり全島が喪に服しました。...
シンガポールは多民族国家にも拘わらず、(少なくとも表面的には)結構よくまとまっていますよね。世界からは「国民統合」を上手く成し遂げたと、概ね賞賛されています。「人種の坩堝(るつぼ)」と言われるアメリカなど典型的ですが、文化的背景や価値観、それこそ宗教や肌の色などが異なると、摩擦・衝突は起きやすいもの。なのに、独立して間もない1969年に起きた華人とマレー人と...
シンガポールは「あれもこれもダメー」と、禁止事項の多い国であると国内外の人々に思われています。違反行為に対しては罰金・懲役・鞭打ちなどの罰則があるので、同国のニックネームの一つがFine Countryというのはあまりに有名ですね。代表的な(?)禁止事項は、チューインガムの国内への持ち込みや国内販売。最近は薬局でガムを目にしますが、これらは米国とのFTA締結で合意した...
読者の皆様、明けましておめでとうございます。いよいよ2015年の幕開けですね。シンガポール居住者として、今年は2つの意味で、特別な年です。一つは、シンガポールが独立50周年を8月に迎えること。もう一つは、いよいよ今年の終わりにASEAN経済共同体(AEC)が始動する「予定」です。8月9日の50周年(SG50)記念日に向けて、専用ウェブサイトwww.singapore50.sg/が立ち上がり、...