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2015.06.08
矢野 暁
シンガポールで仕事をしている皆さんの中には、「この国は祝祭日が少ない気がするなあ」と感じられている方々も多いのではないでしょうか?この原稿を6月1日のヴェサック・デー(Vesak Day)の祝日を利用して書くこともあり、今日はシンガポールの祝祭日(以下、「祝日」)について触れたいと思います。
シンガポールの祝日数は、世界的に見ても確かに相当少ない方なのです。日本には15日あり、世界で3番目に多い。世界で最も祝日が多い国を知っていますか? インドとコロンビアで、18日もあります。アジアではタイと韓国が日本より一日多い16日あり、マレーシア、インドネシア、フィリピンは14日、台湾、香港が12日、そして中国と並んでシンガポールが11日です。実は更に祝日が少ない国があって、それは10日のベトナムです。因みに世界で最も祝日が少ないのはメキシコで、たった7日だそうです。イギリスやオランダも8日しかなく、欧米諸国は比較的少ないのが一般的です。
私はシンガポールに移住する直前に住んでいたベトナムと合わせて20年以上も、アジアで最も祝日が少ない所にいたことになり、何だか損した気分になります(苦笑)。実感としては、シンガポールの祝日はグラフで比較する以上に相当少ないと感じています。ベトナムにしても、他のアジア諸国にしても、旧正月やその他の祝日の際に結構多目に休みをとることが習慣化し、会社などもある程度はそれを尊重するというか、大目に見ているように思います。ところがシンガポールでは、決められた祝日を厳格に守る傾向があります。加えて、シンガポールで働く多くのビジネスパーソンは、アジア域内を飛び回ることが多く、シンガポールの休みも利用して他国へ出張したりして、更に祝日が喰われてしまう、なんてことにもなりがちです。
恥ずかしながら、私はシンガポールに移り住むまでヴェサック・デーという言葉を知りませんでした。何のことはない、日本で言う「花祭り」のことなのですが、仏暦では一年で最も重要な日で、少なくとも宗教分類上は仏教徒である身としては、面目ありません。仏教徒はこの日に善行をすると、多くの徳を積むことができると信じているそうで、私もこの原稿を書き上げてから、家族サービスをいつも以上に行おうと思っています(笑)。
よくよくこの11日間の祝日を見ますと、シンガポールの民族構成にも配慮しつつ、仏教、イスラム教、ヒンズー教、キリスト教の主要宗教への祝日の割り振りを行っていることに気づくことでしょう。この国で生活をしていますと、自然とこれら主要民族・宗教のお祭りや習慣に触れることができ、民族衣装を目にしたり、特別な食事をご馳走になったりと、日本やベトナムなどの単一的な国家にはない多様性を、同僚、近所の人たち、子供の学校などを通じて身近に経験できます。特に子供たちは、比較的自然にこうした多様性に触れることにより、世の中は様々な異なる背景を持つ人たちの集合体であることを、小さい頃から感じ取っていくのだと思います。
祝日の日数こそ少ないですが、それぞれの休みは多くのことを学習・体得できる貴重な日であると感じています。シンガポール島が、国際人材養成のための稽古場であるゆえんです。
矢野 暁(サムヤノ)
Satoru Yano