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COLUMN コラム

マーライオンの眼差し

2016.05.16

マーライオンの眼差し (16) コスモポリタン国家で考える国際人材

矢野 暁

今回のコラムは、本邦経済団体が発行する月刊誌に昨年私が連載したコラムを基に執筆します。

<致命的欠乏症>

シンガポールを拠点に長年アジアの現場で研修やコンサルティングを通じて日本企業の皆さんのお手伝いをする中で、海外事業展開において最も不足している経営資源は、ずばり、国際的な「人材」であるということを痛感しています。世界市場に打って出るべき今この時に、それを実現するための人材が十分にいないのです。組織として資金や技術、優秀でやる気のある幹部・従業員といった資源はあっても、世界で戦える人材が圧倒的に足りない。この状況の改善は、グローバル化の成否を左右する喫緊の最優先課題であると断言できます。

国際人材不足の中には、「日本人以外の人材(外国人)」も対象となります。国際人材としての資質を有していそうな外国人を国内外で積極的に取り込むだけではなく、力を存分に発揮してもらう環境作りも同時に進めていく必要があるのは言うまでもありません。ですが、それがあまり出来ていないのが現実です。

<国際人材とは?>

私はこんな風に定義しています。独自の「コア」や「カラー」を備えつつ、異なる国・市場の習慣や価値観の「違い」「多面性」を認識・受容できる繊細さと柔軟性を持った能力、そして異なる国の人々と上手に、効果的に意思疎通をする能力を身に付けている人。

日本は単一民族・言語から成る島国ゆえ、日本人にはこうした資質・能力が身に付き辛いのもやむを得ません。他方、多民族・言語から構成されている国や、近隣に異なる民族・言語の国を擁する地域の人々は、幼い頃から自然と国際感覚が身に付きやすいことでしょう。しかも日本人は、華人、インド人、ユダヤ人のように世界に民族が散らばっている訳でもないので、いざ国際化となると益々ハンディがあるのも致し方ありません。

日本人同士では、それこそ「腹芸」や「以心伝心」でお互いに分かり合える土壌がありますが、文化的背景が大きく異なる人々と付き合う上では、距離の取り方や意思疎通の仕方に戸惑ってしまうものです。否応なしに国際化が迫られている日本人には、厄介な課題なのです。

海外で、特にアジアで事業展開を加速させる上で、真の意味でどのような資質・能力を持つ人材が必要なのでしょうか? 言葉・知識や海外・異文化経験は大事ですが、欲しいのはそうした要素を伴う人間としての柔軟性・寛容性や、バランス感覚、意思疎通・決定や管理・調整の能力だろうと私は思います。

<アジアを舐めてはいけない>

アジアで必要な国際人材は欧米におけるほどは高度でなくともよい、言葉など大して出来なくともよい、などと考えている企業人が未だに結構いるように見受けられます。特にここ数年は、欧米での仕事・留学経験者によるアジア・シフト傾向が強まっていますが、こうした人達から「アジアのレベルの低さ」をよく耳にします。この根底には欧米・日本は「上」、アジアは「下」という意識が透けて見えます。

しかし、国家の経済水準や産業の近代化具合、企業の規模などに拘わらず、アジアにも日本や欧米と同様に、優秀な人達も沢山いますし、優秀な企業も沢山あります。国際人材という意味では、日本よりも明らかに人材の宝庫です。

真の意味での国際人材とは、「上下」という物差しで判断するのではなく、欧米だろうがアジアだろうが、どこでも「相違」を理解して、その国の目線で実情を捉えることが出来る能力を伴っている人ではないでしょうか?

矢野 暁

矢野 暁(サムヤノ)

Satoru Yano

PROFILE
慶應義塾大学を卒業後、東南アジア諸国における経済・社会インフラ開発に従事。その後、英国投資銀行にて、食品・飲料、ヘルスケア、衣料、小売等の分野のクロスボーダーM&Aの仲介・助言業務に携わる。ベトナム政府に対する国家開発支援アドバイザー、同国での多岐にわたるベンチャー事業の成功を経て、1999年にCrossborderをシンガポールに設立。ASEANを中心に、B2C・B2Bの事業を問わず大手日本企業や中堅企業がアジアで新規市場参入および事業拡張・改善をするために、戦略、組織、パートナーシップ、マーケティング、人材などの面で支援を行っている。また、アジア・ASEANや異文化・リーダーシップなどをテーマとする企業向けセミナーおよび社内研修の講師も務める。シンガポール経営大学(Singapore Management University: SMU)の企業研修部にて、日本企業、多国籍企業、シンガポール企業へのプロジェクト・コーチ&ファシリテーターも兼務。「アジアから日本を元気にする!」と「草の根レベルで地道にコツコツと」をモットーに、アジアを駆け巡りながら毎月の訪日も欠かさない。シンガポール永住。

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