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2016.06.27
矢野 暁
今回から続けて(または時々)、「行こう!」企画の下で、皆様に是非とも一度は訪ねてほしいシンガポールの場所を紹介します。もちろん単なる観光や娯楽を目的とするというのではなく、本コラムに即した「国際人材の稽古場」として相応しいと私が考える場所です。
良く知られている場所だけど行ったことがない、或いは地味であまり一般には知られていない場所など、シンガポール赴任・訪問のビジネスパーソンを私がお連れしたり、企業の研修や学校のスタディツアーの中に盛り込んだりする対象です。
そもそも私のコラムのタイトルからして、「第一弾はマーライオンじゃないの?」と訝る方もいるかもしれませんが、正直、マーライオンを眺めていても、なかなか稽古にはなりません。まあ、人工的なコンクリート創造物をも観光資源にしてしまうシンガポールのマーケティング力には、学ぶべき点も多いですが。
老若男女を問わず、まず足を運んでほしいのが、国立博物館です。何となく固い感じがしますし、「博物館なんてつまらなそう」と思うかもしれません。ですが、特にシンガポールで生活・仕事をする日本人にとっては、一度は必見すべきでしょう。それも、できるだけ早い時期に。
因みに入館料は、外国人の大人が10シンドル、学生・老人は5シンドルです。知っておいて頂きたいのは、シンガポール人(そして永住者も)無料だということです。つまり、いつでも何度でも気軽に入れる、したがって、シンガポール人の大部分の人達がここを訪れているという事実です。(東京国立博物館に行ったことない日本人、恐らくすごく多いですよね。)
このシンガポールで最も古い博物館は(創設1849年)、1993~2005年の期間だけ「歴史博物館」と呼ばれていたくらい、国家発展の歴史の展示に重きを置いています。
地下には特別展示も催されていますし、あれこれと見るものは結構ありますが、特に見て、感じて、そして学び取ってほしいことは、次の2つだけです。別に押し付けるわけではなく、これはあくまでも私の希望です。
1)戦時中の日本軍が大きく取り上げられている事実: 日本軍が1942年にBattle of Singaporeで英国率いる軍と闘い、その勝利から45年までシンガポールを占領した事実と(占領時の名前は「昭南島」)、少なくともその概略をあらためて知ることができます。しかしそれ以上に、日本軍の残虐性を含め、日本とシンガポールとの暗い過去の関わりが博物館の中で大きなスペースを占めている事実(1階と2階に展示)。そして、その展示を大部分のシンガポール人が子供の頃から目にしている事実。このことを頭の片隅に置いてほしいと思います。特に若い世代にとっては「過去のこと」なのですが、「そんな歴史なんて関係ない、シンガポール人の大部分は親日的だ」などと勝手に思い込まない方が安全です。
2)世界一流の国家構築を成し遂げたリーダーシップ: もう一つは、やはりリー・クアンユーが中心に築き上げた国家発展の歴史です。彼のリーダーシップとコミットメントを、強く感じ取ることができることでしょう。小島に放り出されたリーダーが、国家発展と共に世界に知れ渡るほどのリーダーとなったことには、迫力さえ感じられます。「リーダーとは?」「異文化マネジメントとは?」等々を考える一つのヒントを得られると思います。
矢野 暁(サムヤノ)
Satoru Yano